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木の家に住まう 7(明るさの感じ方)

今回は前置きなしで、いきなり本題です。

明るさの感じ方
住宅を新築する場合、明るさや暖かさを考えるには比較対象が難しいですよね。現在のお住まいと、これから出来るお住まいでは確実に違いますが、その程度の差が実感出来ないだけに、悩むのです。

明るさについての感じ方は個人差が非常に大きいのですが、考え方の1つとして必ず部屋の隅々まで明るさで満たす必要は無いと思います。
明るさって利用する部屋の目的や用途に応じて満足していれば事足ります。

隅々まで光で満たされる必要は無い
例えば寝室には明るい日射しが燦々と降り注ぐ必要は無いでしょうし(但し条件に恵まれれば朝陽が入るように部屋や窓を配置しておくと一日の始まりが心地良くスタート出来ます)、キッチンも作業面だけが明るければ、食品を保管している部分には日が射さなくても問題ありません。日が射して温度が上り過ぎると食品が早く傷みます。リビングもテレビを観るのに光の反射が邪魔になるような計画では困るでしょう。

このように考えると建物の隅々まで明るくする必要が無いことをお分かり頂けると思います。

多灯分散ってご存知ですか?
又、照明計画においても同じで隅々まで明るくする必要は無いのです。
照明計画における教えの中に、「多灯分散」(たとうぶんさん)計画と呼ぶ言葉があります。
これは必要に応じて適切な明るさの照明器具を分散配置させて機能させようと言う考え方で必要以上の発電エネルギーを使用しなくて済むので省エネにもなります。

天井に大きな存在感は必要ない
日本の住宅における照明方法は、シーリングライトと呼ぶ大きな照明器具が天井の中央付近に、どーんと据えつけられ存在感を示します。そして、そのシーリングライトが部屋の隅々まで隈なく照らし出しますが、その必要はありませんよね。それが各部屋同じように計画されているのですから、見た目にも不細工で電力を浪費していること、この上ありません。
照明器具ってあくまでも脇役ですよ。主役級の存在感は必要ありません。そろそろ、そんな照明計画は止めないと日本の住宅は良くなるわけがありません。

私共の建物では、この多灯分散方式の考えに基づき、ダイニングなどの主になる部分にはちょっとお金を掛け必要な照度を確保出来る照明器具を配置し、その他の部分には器具の存在を出来るだけ薄めた照明器具を設ける計画により、トータルコーディネートしています。

ショールームの提案は信用しない
ショールームに行って照明計画をしてもらうと多灯分散型の計画はしてくれると思いますが、どうしても明る過ぎます。それは提案する側も日本の慣習によって明るいのが普通であるように育っていることが起因しているように思いますが、ある程度の年齢に達するまでは、それよりも少々照度が落ちても直ぐに慣れます。又ショールームって商品が売れて、なんぼなんですから、1つでも多く売りたいと言う事を考えると、安易に信用するべきでは無い理由をお分かり頂けると思います。もし、暗いと感じるならばスタンド照明などを付加して補えば良いと思います。

オレンジか白か
又、電球色と呼ぶオレンジ色の電球は、昼光色や昼白色と呼ぶ白い電球の色に比べると少し暗く感じるかもしれませんが、これも慣れます。但し、食品の色や色を判断しないといけないような作業や仕事の場に電球色の電球を採用するのは控えた方がいいと思います。

明る過ぎることのデメリット
明る過ぎることのデメリットは、眠る前に明る過ぎる照明にあたっていると脳からセロトニンと言う身体を興奮させる物質が分泌され、眠り難くなると言った研究報告があります。寝る前のスマホを控えましょうと言われるのは、正にこれです。

又、日本人と欧米人の瞳の色の違いは明るさの感じ方に違いもあるようです。白色人種の青い瞳は、より光に敏感に反応するようで電球色の照明器具が生活に浸透しているのは納得できます。

しかし、アジア人の我々も明るさには慣れますので、特に若い年代の方々には光々と明るい部屋作りを見直した方が良いと思います。
もっとも、これだけスマホが普及すると、若い年代の目の老化速度は格段にはやくなっているとは思いますが・・・。

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