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木の家に住まう 5

シルバーウィーク最終日
幸い、連休は好天に恵まれましたね。
車で走っていても、気持ち良さそうにツーリングしているバイクをよく見かけます。紅葉のシーズンには未だ早いけども暑さも峠を越えた感じですね。

さて、この辺りで、そろそろ「木の家に住まう」の片りんを見せておきたいと思いますが色々あるので、どんな内容にしようか迷いながら決めました。

木配りは、気配り
私は、国産材による木の住まいの設計を独立以来ずっと続けているのですが、設計事務所は設計だけをしている訳ではありません。現場で工事が始まれば監理と呼ぶ仕事も当然あるのですが、それ以外にも料理に例えるところの、下ごしらえ、若しくは、下準備に該当する作業があります。
それが今回紹介させて頂きます「木配り」(きくばり)と呼ぶ作業です。

適材適所
「木配り」とは、書いて字のごとく木を配る訳ですが、1本1本、木の表情を見極めて適材適所に配置する作業です。
木に住所を与える作業と言えます。もっとも、この作業が必要なのは建物が完成してからも材料が家の中に見えるためで、壁も天井もボードで覆われた住まいでは、このような作業は大して意味をなさないかもしれません。
そのような意味で、木の住まいづくりにおける片りんと言えるでしょう。

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見る目を養う
この作業、元は大工さんがやっていたのですが、プレカットと呼ぶ機械による材料の加工が主になった現在では、プレカット(機械)任せになりがちなんです。壁も天井もボードで覆われた建物では、それで良いのかもしれません。
しかし、木も人と同じように1本ずつ全部表情が違います。
同じ等級であっても、ある木は節が目立ち、ある木は綺麗な木目であったり、同じ木でも四つの面で、それぞれに表情があって面白いんです。
そう、見る目を養う作業でもあるのです。

どんな作業
この作業ですが、先ずは材料の元末(もとすえ)を揃えて並べ、木目、色、節の有無、多い少ないなどを判断材料とします。出来るだけ木が綺麗に見える部分を室内の人の目の付きやすい個所に配置します。元末とは山で木が立っている状態にある時に根元に該当する部分を「元」、その反対側を「末」と呼ぶのですが、製材して四角い材料となった木の元末を見極めるのは、実は難しかったりします。どうしても見極めがつかない場合は林業のプロの目利きに頼ることになります。

番付(ばんづけ)
これを1軒の住まいの室内に見える柱や梁の全部の材料について行います。
30~40坪程度の建物だと丸一日掛かり、重い材料を写真のように持ち上げたり、右や左に動かしたりするので結構な重労働なんです。
そして材料の行き先が決まれば、その小口や番付面と呼ぶ四つの面のどこかに番付を書きます。この番付は、材料の行き先や向きなどを決める、とても重要な情報となるのです。例えば「いノ一」(いのいち)番と言う番付があるのですが、「いのいちばんに〇〇する」と言う表現は、番付が語源なのかもしれません。現場に入って来る材料にはインクによる印字で番付が書き込まれています。写真の段階ではチョークかマジックなんですが・・・。
相撲の番付とは少し意味合いが変わりますね。

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メリット
この作業のメリットは、材料の人の目につく個所は出来るだけ綺麗な部分が見えるようにコントロール出来ることです。先ほど同じ等級の木であっても綺麗な部分と、そうで無い部分があると書きましたが、もしこの作業が無ければ木の汚い面が生活している空間に常に存在することとなります。それを気にしながら暮らして頂くのもどうかと思いますので、やはり必要な作業だと思います。金額が変わらないなら、綺麗な部分が見えている方が良いと思いませんか?
木配りは、住まい手と長年山で育ってきた木に対して尊敬の念を込めた、私たちからの気配りでもあります。

今日の写真
先頭に掲載した写真と途中の木配り作業をしている物件は全く別物ですが、新築物件については、ほぼ全棟について、このような作業を繰り返しています。

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