木の家に住まう 15(木の家の構造)
少し間が空いてしまいました、続けることの難しさもありますが、投稿しないことは容易にできます。
構造について
さて、今回は構造についてお話したいと思います。
私が事務所を開設した約20年ほど前、地元には幾つかの製材所があったのですが、それらの多くは主に米松(ベイマツ)と呼ぶいわゆる外材を挽いていました。
それが今では残っている殆どの製材所は杉やヒノキなどの国産材を挽いています。この間に何があったのでしょう?
杉をヨコモノに使う
話は変わり、同じように私が事務所を開設した約20年前、杉をヨコモノ(梁として)に使うと言うと大工さんからは怪訝な顔をされました。
当時の梁材の主流は米松でしたので、やわらかい杉をヨコモノに用いることは邪道と思われたのかもしれません。
ヤング係数とは
「やわらかい」と表現したのは数値でも示されていて、ヤング係数と呼ぶ数値で比較すると杉は針葉樹の中でも最も低い位置にグレードされています。
ヤング係数とは、材料のたわみに影響する数値です。
「たわみ」とは、例えば梁材を一本の棒に見立てた時、両端を何かの台の上に固定し、中間の部分は空中にある状態の時、中間部におもりを載せたとして、中間部がどの程度、沈み込むか?と言った量や割合のことを指します。
沈み込む量が大きいことを、たわみが大きいと表現します。
ヤング係数が小さいほど、たわみ量は大きくなる訳ですので同じ断面積の状態では、杉はたわみ量が大きくなります。
但し、同じたわみ量にしたい場合は材料の断面積を大きくすれば良いことになります。
従って、杉をヨコモノに使う場合、米松と比較すると少し大きな材料を用いることで性能を担保出来る訳です。今少し大きな材料と申し上げましたが、長方形断面の材料には幅と高さがあり、特に高さに該当する数値を上げると、先のたわみ量に対抗する効果が高くなります。
ねばり
杉の弱さの話をしたのですが、しかし杉には、ねばりがあります。ゴムのようなイメージと表現されているのが以下の宮崎県木材協同組合連合会のサイトです。
https://miyazaki-mokuzai.or.jp/knowcedar/
さくい
米松は「さくい」と表現する大工さんが居ます。「さくい」とは方言で、ねばり強さが無く脆いとも言えるかもしれません。普段、材料を刻んでいる職人さん独特の体感ですね。私も米松や杉を切ったり、加工したりした経験がありますが、正にその表現はぴったりだと思います。
米松にノコを入れると簡単に繊維が剥離し材料が分離するのに対し杉の場合は、その逆で簡単には剥離しない、即ち繊維間の結びつきが強い様に感じます。あくまでも個人の感想に過ぎませんが・・・。
タテのモノをヨコに使う
木は山では元々天に向かって伸びていた、いわゆるタテに育っていた材料ですので、それをそのままの状態で使用する場合、相当な能力を発揮する訳ですが、それをヨコに寝かせて使うことで木に掛かるストレスも大きくなり、使用できる限界点が低くなります。
これは木の繊維方向がタテに伸びていることが関係していて、ヨコにして使うことで繊維方向に直行するようにストレスが発生することが原因です。
数値を示した具体的な表現法もありですが、数値を出すことで専門化し過ぎることも懸念し、少し曖昧になったかもしれませんが、一般の方にも分かりやすいことを今回の投稿では目指しました。
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