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医師に必要な医療情報を届ける

エムスリーのデータサイエンティスト島田です。

エムスリーの持つ医療従事者向け会員制サイトm3.comでは、最新の医療情報(以下コンテンツ)をお届けしています。今回は、データを活用して、医師の方々が求めるコンテンツを定量的に示したプロジェクトを紹介いたします。

情報提供における課題

エムスリーの主力事業の一つであるMR君では、製薬企業のMRが毎日の診療に役立つ最新のコンテンツを医師の方々にお届けしています。

医療のプロフェッショナルである医師がどのような情報を求めているのか、提供した情報を日々の診療や処方に役立てていただけているかを分析することは重要です。それらの分析をもとにコンテンツ作成を行い(P)、情報提供を行い(D)、その結果を確認し(C)、次のコンテンツ作成のプランを練る(A)、というPDCAを常に回しています。

一方で、各疾患や薬剤の知識に関して医師間でも一定のばらつきがあり、ある医師にとっては有用な情報であっても、別の医師に取っては既知の情報であることは往々にしてあります。そのため、医師ごとに必要な情報を割り出すことが重要になってきます。

定量的評価と機械学習を用いた分析

必要な情報を割り出すには、提供を受けた情報が必要であったかどうかを判断するためのKPI設定が必須になります。医師の方々に回答いただいた情報提供による処方への影響度のアンケート結果を用いたり、薬剤売上を用いたりします。

次に、設定したKPIを予測する機械学習モデルを作成します。コンテンツの話者(専門医・開発者等)、薬剤情報(有効性・副作用等)といったコンテンツ情報だけでなく、診療科、年齢、m3.com上での行動履歴といった医師の情報を用意します。これらを特徴量としてLightGBMのようなデータ分析コンペでよく利用される手法を利用して、機械学習モデルを作成します。

クラスタリングを実施して、各群に情報提供

上記機械学習モデルを利用することで、各医師にどのコンテンツをお届けすると、KPIがどう変化するかをシミュレーションすることが可能になりました。

一方で、コンテンツの多くは動画形式となっており、各医師向けに動画を作成するのは、工数およびコストの観点から現実的ではありません。そこで、上記シミュレーション結果を利用して、各医師をクラスタリングします。その結果、「専門医の意見を参考にする医師群」、「副作用情報を重要視する医師群」のように必要な情報内容ごとに各医師をクラスター分けできます。このクラスター分けは重要で、分析結果をそのままお伝えするだけでは周囲の理解を得ることは難しいです。なぜこういうクラスターに分かれたのかを説明し、プロジェクトメンバーに納得してもらう必要が有ります。これもデータサイエンティストの大事な役目です。

そして、各医師群に必要な情報を主軸にしたコンテンツ作成をコンテンツ制作の方々と共に行います。そして、そのコンテンツを各医師群にお届けします。必要に応じて、その効果測定も行い、効果が出ていたか、出なかったのであればどのように修正すべきかを検討し、PDCAを回しながら、KPIを向上させていきます。

社会的意義の大きさと事業インパクトの大きさ

医師が必要な情報を定量的に示して、その分析結果をもとに医師に必要な情報を届けられるという社会的意義の大きさがこのプロジェクトの最も大きなやりがいです。

また、本プロジェクトは、コンテンツ制作者や製薬企業を巻き込んだ大型プロジェクトになることが多く、分析結果はその意思決定の根幹に位置します。過去にABテストを実施した結果、数パーセントの薬剤売上効果が出たこともあり、売上100億円超の薬剤が多数存在することを考えるとそのインパクトの大きさがわかると思います。やりがいと共にその責任の大きさを日々感じています。

さいごに

エムスリーのデータサイエンティストは、エムスリーの事業が持つ課題だけでなく、製薬企業・医療業界が持つ課題に取り組んでいます。そして、あらゆるデータ、あらゆる分析手法を用いてその課題を解決しています。ビジネス x 分析に興味のある方にとっては大変魅力的な職場であると自負しています。

採用HPでは、働いているメンバーやその他のプロジェクト事例を紹介しているので、興味のある方は是非ご覧ください。下記求人票からのエントリーもお待ちしています。
採用HP:https://jobs.m3.com/data-scientist/
求人票 :https://open.talentio.com/1/c/m3-inc/requisitions/detail/10233