完全無人タクシーの営業が始まった。

 2023年8月10日、米国カリフォルニア州当局は米国グーグル傘下のウェイモと米国ゼネラル・モーターズ傘下のクルーズの2社に、サンフランシスコ市内で自動運転車による「完全無人タクシー」の24時間営業を認めた。
 現在、両社はそれぞれ約100台を運用するが、今後はさらに増やしていく予定である。これらの車はレベル5の技術を搭載しており、人間の介入なしにあらゆる道路環境で走行できる。
 完全無人タクシーは運転手が一切乗車しない自動運転車で、乗客はスマートフォンやタブレットなどのデバイスで呼び出しや操作を行う。自動運転技術の普及に向けた大きな一歩であるとともに、様々な利点をもたらす可能性が高く、文明の一つの転換となり得る。 第一に交通事故の大幅な減少が期待できる。自動運転車は人間のミスや不注意を防ぎ、安全な運転を維持する。自動運転車同士やインフラとの連携によって、交通状況や障害物を把握し、迅速に対応する。
 具体的な数値はないが、一般的に言えば、自動運転車は人間の運転よりも正確で安全な
判断を行い、ミスや不注意による事故は大幅に減少する。また高齢者の移動手段として極めて有用となる。
 交通渋滞の緩和も期待できる。最適な速度や距離を保ち、無駄なブレーキや加速を減らすことができる。また車の需要に応じて効率的に配車されるため、道路上の車両数を減らせる。
 環境負荷の低減にも大きな貢献をする。自動運転車は燃費や排出ガスを最小限に抑えるが、電気自動車や水素自動車などのクリーンエネルギーを利用すれば、化石燃料の消費や二酸化炭素の排出を削減する。
 また利便性の向上も期待でき、運転者や乗客のニーズや好みに合わせてサービスを提供する。例えば目的地や経路の設定、音楽や空調の調整、支払い方法の選択などがあるが、運転に集中する必要がなく、運転者は移動中に他の活動を行うことができる。
 一方、自動運転車にも課題がある。安全面では、自動運転車が人間の運転手や歩行者の判断や行動に対応できるか、故障や事故が発生した場合にどのように対処するかなどである。これらの問題は技術が進化するとともに、さらに改善されることが期待できる。
 さらに完全無人タクシーのサービス品質や料金設定についても、利用者の満足度や公平性を確保する必要がある。この課題を解決するには自動運転車の技術的な改善だけでなく、法的な規制や社会的な受容度の向上が必要である。
 わが国でも改正道路交通法の施行に伴い、22年4月に特定の条件の下、ドライバーがいない状態のレベル4の自動運転車が解禁された。過疎地域など地方における公共交通機関での活用が行われているが、本格的な導入はまだ先の話である。

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