賃金の減少。

 2023年6月の労働者の実質賃金が1.6%減少し、15カ月連続のマイナスとなった。わが国の経済にとって、極めて深刻な状況を示すが、その一例として非正社員の賃金が大きく減少し、コロナ禍による雇用不安や働き方改革の影響があると思われる。
 労働者の内訳を見ると、「正規の職員・従業員」が63.1%で、5年前に比べると1.3ポイント上昇した。一方、「非正規の職員・従業員」は36.9%を示し、1.3ポイント低下し、建設、運送、飲食、福祉などを中心に人手不足が言われている昨今、僅かに正社員化が広がった。
 しかし、正規か非正規の問題もあるが、将来は労働というものかが、どう変わるか、どうなるか分からない状況では、重要な課題は賃金である。労働者(平均年齢43.7歳)の平均給与は月収で31.1万円、年収では496.5万円で、これでは家族が暮らすには苦しい。
 わが国は長く続いた超金融緩和に慣れてしまっており、今はその副作用であるインフレの痛みを痛烈に浴びている。経済の価値は労働・イノベーションであり、刷られた金によってもたらされるものではない、そういった基本的な教訓を、多くの人が学んだと思う。
 これから先の金融緩和と財政出動は、さらなる円安・インフレを呼ぶ。金融緩和は開始初期と比べ効果が乏しく、ここにきては金融正常化に向け、ぜひとも本格的な議論が必要である。このまま放置しては消費や投資が低迷し、デフレーションに陥る恐れがある。
 一方で、インフレ率は高止まりし、スタグフレーションと言える状況に陥っている。国民はインフレに賛同した訳ではなく、大いに迷惑を受けており、大幅なデフレを望んでいるのは言うまでもない。
 とくにわが国の衣食住の費用が高額で、これが国民生活には決定的な致命傷となっているばかりでなく、経済の発展を大きく損なっている。またこれらが国民の財布に大きなダメージを与えており、根本的な改革が必要である。
 政府や企業は、非正社員の給与水準を底上げするために、最低賃金の引き上げや正社員への転換促進などの施策を講じるべきだが、実際にはこれらを煽り立てるだけで、それ以上のことはない。
 一時期、メディアは毎日のように賃上げのかけ声を発したが、結局、物価高を超える給料の上昇はなく、先行きの不安感は拭いきれない。さらに悪いことに聞こえてくるのは増税の声ばかりだ。この先を見据えても、高齢化はさらに進み、少子化はさらに進行し、さらに現役世代の負担が重くなる。
 将来に希望を抱くことは厳しいと言わざるを得ない。

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