国連事務総長のガザ訪問。

 2023年10月20日、アントニオ・グテーレス事務総長はエジプトとパレスチナ自治区ガザ地区との国境にあるラファ検問所を訪れた。10月7日のハマスの大規模な奇襲攻撃以後、イスラエルの空爆による激しい反撃が続く中、深刻な人道危機に直面しているガザ地区の状況を視察した。
 同氏は支援物資の搬入が遅れていることに憤りを表明し、「この壁の向こうでは200万の人々が水も食料も、医薬品も燃料もなく、戦火の中で苦しんでいる。一方で、壁の向こう側でまさに必要とされている物資を積んだたくさんのトラックはこちら側にいる」と述べた。
 同氏はエジプトやイスラエル、米国と協力して、支援物資を運ぶトラックがガザに入れるようにする点が重要だと主張し、またガザの人々に必要な物資を届けるのが国連の責任だと強調した。
 さらにイスラエルとハマスに対し、改めて停戦を呼び掛け、暴力は解決策ではなく、平和的な交渉が必要だと述べ、イスラエルとパレスチナの両方の人々が安全で尊厳ある生活を送るようにするには、2つの国家解決策が唯一の道だと提案した。
 この提案は平和的な解決策を求める国際社会の立場を示すもので、多くの国と人々から支持されている。しかし、イスラエルはハマスをテロ組織とみなし、パレスチナ国家の建設に反対しており、一方、ハマスはイスラエルの存在を認めず、武装闘争を続けると宣言している。
 グテーレス事務総長は同日午後からガザ地区に入り、国際連合のパレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営する学校やクリニックなどを視察した。UNRWAは約3万人の職員を抱える国連機関の中でも最大規模で、そのうちの99%はパレスチナ人である。
 UNRWAが認定する難民はガザ地区、ヨルダン川西岸地区、ヨルダン、レバノン、シリアの各地約500万人であり、そのうちの200万人がガザ地区に住んでおり、170万人が難民として認定されている。
 ガザ地区は約360平方キロメートルという狭い土地に約200万人が暮らす世界で、最も人口密度が高い地域である。しかし、07年からイスラエルによって封鎖されており、「人や物資」の移動が厳しく制限される天井のない監獄と呼ばれる。
 このような状況から、イスラエルはパレスチナ自治政府や実効支配するハマスを通さずに国連に対して、ハマスを排除するため、ガザ地区の北部に住む約110万人に対し、24時間以内に同地区の南部に避難するよう通告した。
 しかし、イスラエルの空爆を逃れるため南部に避難してきた人々の一部は悲惨な生活を強いられ、空爆で多くの人が死亡したことを理由に北部への帰還を試みているという報告もある。

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