親子関係は社会の鏡。

 わが国は「分断社会」と言われるほど、人と人とのつながりが希薄になり、格差や孤立が深まっている。その中で最も深刻なのは、家族という最も身近な絆が壊れて、親子の間に溝ができ、心の交流がなくなるケースが増えている。
 内閣府の調査によると、15~64歳で外出しない「ひきこもり」は、全国で約146万人に上り、40~64歳では50人に1人の割合である。2015年の前回調査から30万人も増えており、過去最高を更新した。
 ひきこもりが長引くと、親は高齢になって働けなくなり、収入や介護の問題に直面する。これは「8050問題」と呼ばれており、10年頃から社会問題として注目されている。ひきこもり以外にも、親子の関係にはさまざまな問題がある。
 親子が長く同居している場合、親子の間に「昭和的な価値観」に基づく不健全な共依存関係ができてしまう場合がある。親は子どもの自立を妨げ、子どもは親の期待や干渉に従ってしまう。これは親子の愛情や安心感という名目で、正当化される場合もあるが、実際には親子の自尊心を損ない、社会適応力を低下させる悪循環となる。
 昨今、毒親や親ガチャという言葉が流行っている。毒親とは、自分の子どもに対して支配や干渉、暴力や虐待、無関心や放置などを行い、心身の発達や自立を阻害するような親をいう。
 親ガチャとは、生まれた時にどんな親に当たるかは運次第であり、その結果が人生に大きく影響するという考え方である。これらの言葉は、若者たちが自分の家族環境に対して不満や不安を感じていることを表している。
 家族は社会参加や社会貢献の基礎であり、家族から得られる教育や経済的支援は、個人の能力や生活水準に大きく影響し、社会との分断化にもつながっていく。家族が機能しなければ、個人は社会から取り残されやすくなり、社会的弱者層が増加する。
 また家族から受け継ぐ価値観や思想は政治的・宗教的・文化的な選択に反映される。成長期において非常に重要な役割を果たすが、社会の分断や対立は家族間の分断化や孤立化を招く可能性がある。
 親子関係を改善するには、社会の構造を変革かる必要があるが、まず家族内でコミュニケーションをとり、互いの気持ちや考えを尊重し合う。親子は一方的ではなく相互的であるべきで、親は子どもの自己決定権を認め、子どもは親の意見を聞く姿勢が大切である。
 次に社会の支援を求めることが大切だが、ひきこもりや共依存関係などの問題は、家族だけで解決することが難しい場合が多い。専門家や相談機関などに相談したり、同じ悩みを抱える仲間と交流したりすると、問題解決のヒントが見つかるかもしれない。

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