人口減少時代と鎖国。
わが国は世界で最も高齢化が進んだ国の一つであり、出生率の低下と死亡率の上昇により、09年から人口が減少している。23年の出生数は75万8631人と8年連続で低下し、戦後最低を更新した。
一方、死亡数は140万人を超え、自然減少は64万人に達した。このままでは6年後の30年には人口が1億人を割り込み、50年には8千万人台となる。さらに2100年には6414万人に減少し、22世紀には人口半減社会を迎える運命にある。
人口減少は経済や社会に深刻な影響を及ぼす。経済面では、労働力や消費者の減少により、経済成長が低下し、税収や社会保障費のバランスが崩れる。社会面では、高齢者の増加により、医療や介護の需要が高まり、負担が重くなる。また地域や家族のつながりが希薄化し、孤立や孤独死が増える。
だから、同じことをしていても意味がない。少子高齢社会とこれに伴う人口減少社会の到来は、すでに三十年も前から分かっていた。2000年に介護保険制度を創設したのはその一つの理由だが、他方、少子化対策として婚活や出産・育児支援などを行ってきたが、効果は限定的だった。
少子化の原因は国と国民が貧しくなり、大家族主義を崩壊させたのが最も大きな要因である。それにもかかわらず、表面的な問題を取り上げて、解決策は複雑で多様であり、一朝一夕に改善できるものではなく、政府だけでなく、企業や地域社会、個人も協力して、少子化問題に対処する必要があると御託を並べている。
2024年2月27日の記者会見で、林官房長官は「少子化の進行は危機的な状況。前例のない規模で少子化対策の強化に取り組んでいく」と今後の方針を述べた。しかし、この発言はこれまでの繰り返しで、政府には何としても少子化をここで食い止めるという強烈な意志は微塵にも見られず、何の現実味と真剣味も感じられない。
そんなにやる気がないなら、人口推計に従って、今から人口1億人、5千万人という縮小というか、新しい国作りを計画する。幸い、わが国は鎖国時代という貴重な経験をし、その見本がある。
わが国は江戸時代(1603年~1867年)の初期に人口が大きく伸びた後、長期間約3千万人の程度でほぼ固定した。現在のわが国はエネルギーの78%、食糧(カロリーベース)の60%、木材の82%を海外からの輸入に頼っている。鎖国中の約250年間は海外からは何も輸入せず、すべてを国内のエネルギーや資源で賄った。
つまり化石燃料をほとんど使わずに、戦争のない時代を作り、素晴らしい文化を発展させた。ここ数年「江戸時代は、人口も安定し、国内だけの物質収支で成り立っていた循環型の持続可能な社会だった」という認識が広がり、江戸時代の社会のあり方を学んだり、その知恵を現代に活かそうとする動きがある。
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