製造責任。

 2022年11月20日岸田首相は、政治と金の疑惑を抱える寺田・総務相を更迭した。この1か月足らずで、山際・経済再生担当相、葉梨・法相に続き、3人の閣僚が相次ぎ辞任に追い込まれ、「辞任ドミノ」が現実となった。
 政権への打撃は大きく、内閣支持率の低迷に苦しむ首相の求心力が一段と低下するのは明らかで、内閣改造・自由民主党役員人事を刷新し、逃れようとする様子がみえる。一方、任命責任者として退任を求める声も日増しに高まっている。
 寺田氏を巡っては、後援会の政治資金収支報告書に故人を会計責任者として記載していた問題が露呈し、昨年の衆議院選挙で公職選挙法が禁じる運動員買収を行った疑惑も浮上している。野党だけでなく、党内からも辞めさせるべきだという声が強かった。
 山際氏は旧統一教会との濃厚な関係が次々と発覚し、メディアと野党からの追及を受けて、首相が事実上更迭した。その4日後に自民党の新型コロナウイルス等感染症対策本部長に就任し、これには世間も唖然とした。
 葉梨氏は「死刑のはんこ」と言われる「法務大臣というのは、朝、死刑のはんこを押して、昼のニュースのトップになるのはそういう時だけという地味な役職だ」と発言し、解任された。
 3人のうち2人は東京大学法学部の卒業で、ともに経歴が似ており、寺田氏は財務省、葉梨氏は法務省で勤務したエリート官僚で、それぞれ政治家の跡継ぎとして議員になった。その他に最近話題になった衆議院議長の細田氏がいる。同氏も東大法学部の出身で、通商産業省の官僚として勤めた後、後を継いで政界入りした。旧統一教会との関係や女性記者に対するセクハラ疑惑が問題になっている。
 東京大学はわが国で最も伝統のある官学で、全国から優秀な学生が集まる。各分野で枢要の地位に就く人が多く、政官財でもその傾向が強い。一般に同大の出身者の能力は高く、彼らには公益と国益に尽くしてもらいたいと切に願うが、人間性になると、別のようだ。彼らは庶民の考え方とかなり解離し、公僕としての立場も忘却の彼方にあるようだ。
 とくに省庁の幹部は東大出身者が多く、彼らは行政を牛耳り、尊大に振る舞い、接待などもずいぶん横行する。政治家や官僚の不祥事が連発すると、東京大学の製造責任を問いたいと思う時がある。
 相次ぐ閣僚の交代に、与党の関係者は通常なら首相を続けるのが難しくなるほどの事態だ」と危機感を募らせ、暗に岸田氏の退任を示唆する。一方、野党は勢いづいており、立憲民主党の泉・代表は人事管理力のなさと任命責任を追及する。
 首相の製造責任も問われている。

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