春の花粉症について。

 今年も花粉症の季節がやってきた。花粉症かと思ったら新型コロナ感染症(コロナ2019)に感染していた、そういった話になる可能性もある。くしゃみや鼻水が出る症状で花粉症を疑い、診療を受けたところ、コロナだったということにもなりかねない。
 花粉症とコロナは倦怠感や頭痛を伴う場合がある。味覚と嗅覚の障害が起きるのが共通点の一つだが、両者で大きく異なる点は発熱の有無で、コロナでは発熱はほぼ必発だが、花粉症では熱は出ない。
 花粉症は植物の花粉による季節性のアレルギー性疾患で、4、5%の人が罹り、軽症を含めると人口の半分にある報告もある。原因となる植物はスギやヒノキをはじめ、イネ、ヨモギ、カモガヤ、ブタクサ、シラカンバなどが多い。スギは3月、スギ花粉と抗原性が類似するヒノキは4月に流行る。最近スギ花粉症は小児で著しく増加しているのが注目される。
 春の花粉症はスギ林が多いことから、スギ花粉症の頻度が最も高い。花粉は植物の種類によって飛散時期が異なり、発症時期によって花粉の種類が推定できる。スギは1月以降、ヒノキは3月以降、イネの場合は5~6月、ブタクサは9月に流行する。
 2023年のスギ花粉の飛散開始は、2月上旬に九州や四国で始まった。花粉前線は1か月かけて東北に到達し、飛散のピークは福岡で2月下旬から3月上旬、高松や広島、大阪、名古屋では3月上旬から中旬の予想で、金沢、東京、仙台では3月上旬から下旬となる。今年は大量の飛散が見込まれており、ピークの時期も長くなりそうだ。
 話題は一転し、不治の病と言われたがんは遺伝子の病気である。19年に新しく診断されたがん患者は99万9千例で、死因の第1位を占め、37万6千人を数え、死亡率は約38%を示した。がんの病因はほぼ解明されたが、まだ治癒率が向上する余地は大きく、今後治療の進歩が期待される。
 医学研究の次の目標は、死亡率は低くても悩ましいアレルギー疾患の克服である。アレルギー疾患は免疫反応の異常によって生じる病気の総称で、わが国では2人に1人が何らかの物質に対してアレルギーを持つとされる。
 アレルギーとは免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こるが、原因は不詳で、生活環境の他、抗原に対する曝露、遺伝などが要因と言われる。アレルギーを引き起こす環境由来の抗原はハウスダスト、ダニ、花粉、米、小麦、ソバ、酵母、ゼラチンなど様々な物質が知られている。
 アレルギー性疾患は鼻炎の他にアナフィラキシー、気管支喘息、じんましん、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、血小板減少症、過敏性肺炎、薬物アレルギーなど多彩な病気がある。
 自己免疫疾患もアレルギー性疾患である。しかし、外因性アレルギーとは異なり、自分が持っている抗原に対して免疫反応が生じ、内因性の抗原に対するアレルギー反応が本態で、両者とも同一の病態で発病する。
 自己免疫疾患は生体構成タンパク質の一種であるコラーゲンに炎症が生じる膠原病を含む。関節リウマチ、バセドウ病、橋本病、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、全身性強皮症、血管炎症候群、原発性胆汁性胆管炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、円形脱毛症など多様な疾患がある。

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