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[第六話]手首骨折からの、的前。

なんだか、当時の精神年齢が幼過ぎて。
別人の話を書いてる様で面白いので。
続けます。

3年生の先輩達は、県総合体育大会で優勝。
インターハイ出場を決めていました。

そのタイミングで、T監督が部員全員を集め、30分程度、ミーティング。

そんな中で、こんなお話を頂きました。

T監督「弓道は、野球みたいなメジャーなスポーツではなくて、マイナースポーツだから、それを高校でいくら頑張っても飯は食えない。

日本一になりました、国体選手に選ばれました、技能優秀をとりました。
いくらそんな事を言っても、高校の思い出にしかならない。
その思い出の為に、こんなに立派な道場で、弓が引ける、この環境にまず感謝しなさい。
そして、その思い出にしかならない事を応援してもらうには説得力が必要だ。
学生の本分は勉強。まず、成績が落ちれば、いくら弓道を頑張りたいと言っても、親を説得する事は出来るわけがない。
毎朝3年生がやってるゴミ拾い。”弓道部はいい子達だ”と、教師に好かれれば、応援して貰える。
説得力や、応援をして貰えるように勉強し、周りの大人が認めてくれるような高校生らしい生活をしなさい。

俺は、最後の決勝戦。こいつら(3年生)に、”お前らが正義であれば、勝てるよ“と言った。
最後の最後で勝負が決まる時、みんながお前らを好いていて、お前らに勝って欲しくて、応援してくれるなら、勝てるよ。と、言った。
今回はこいつら(3年生)が勝ったけど、結果より過程が尊い。過程の方がはるかに尊い……」

おおよそ、こんな事を仰っていました。(一言一句は覚えていないが”正義は勝つ”と言う話と”弓道で飯は食えない”と言う話は、確かこのタイミングでした。

そんなありがたいお説法を頂きながらも、県総体が終われば、勝っても負けても代替わり。
初夏。新部長、新副部長と、各役職が選任されて、1,2年生主体の部活がスタートしました。

そして、我々1年生は巻藁練習ができる人から順番に巻藁練習…
私も、3年生が県総体を終えて、しばらくしたところで、巻藁練習に入ることができました。

…ところが…
7月……
夏休みを目前に控えたある日の事です。
いつものように、部活に行くために、自転車で学校に向かっていました。

その道中……人通りの少ない土手沿いにて。
強烈な目眩に襲われて、意識が飛びました。
ただの貧血です。

気がつくと、左手が、自分の身体の下敷きになっていました。
しかし、その時は痛みは何もなく、しかし、手首に力が入らなかったです。

外見上は、何事もなかったので、学校に着く頃には回復していると思い、そのまま何事もなかったかのように、自転車を走らせました。

しかし、学校に到着すると先輩が叫びます。

先輩「0w0(仮)!?なに!?この手!!」
0w0(仮)「???」

先輩の悲鳴により、左手に目をやると、自分の手が3倍くらいに腫れ上がってました。

0w0(仮)「あーーー。さっき、コケたんです。なんか、手が熱いなぁ?って思っていました。でも、大丈夫です。素引きや巻藁は今日は出来ないと思いますが、何も持たずに射の練習なら参加できます。」

あっけらかんと、そんな感じで言うと、先輩から喝が入りました。

先輩「何馬鹿言ってんの!!今日は帰って、病院行きなさい!!」

0w0(仮)「嫌です!!やれます!!練習ダメなら、先輩達の矢取り※だけでもさせてください!!」
※矢取りとは:的に向けて打った矢を回収すること

散々ゴネたので、その時は、先輩は引き下がって、とりあえず”準備だけ”は参加させて貰えました。
しかし、部活が始まる直前になって、部長がおっかない顔をして私の元へやってきました。

部長「0w0(仮)。今日は帰りなさい!!」
0w0(仮)「やです!!」

部長「…今日部活やってもいいけど、今日1日部活参加して、もしそのせいで1日で治ったはずのものが治らなかったらどーするの?」

0w0(仮)「(ㆀ˘・з・˘)…」←ブー垂れた顔をしている。

部長「私もね。1年生の時に、熱あるのに無理して部活に出たことあるよ。だけどその後、悪化して、結局3日間、学校を休むことになった。3日だよ?
たった1日休めば治っていたかもしれないのに、無理して参加して結局長引いた。自分馬鹿だったなぁ、って、すごく後悔したね!!」
0w0(仮)「……」←半べそかいている。

部長「大丈夫と思っているかもしれないけれど、過信しちゃダメだよ。今日は帰りなさい。よく冷やして。ね?」

0w0(仮)「解りました。帰ります……ありがとうございました(泣)」

1年しか歳の差がない先輩に、ガッツリ大人対応でなだめられた……お子様という感じ……
今日のところは、引き下がるか…と、帰りの道中。
手に痛みが出てきて、家に着く頃には声が出せない程度に激痛が走っていました。

病院行かなくてもいいかな?と思っていましたが、流石にヤバさを感じ、母の職場に電話。

0w0(仮)「おか……あ…さ…。転んで手怪我した。病院行きたい……です……。」

母「仕事中だから、お金と診察券取りに来て。」

フラフラしながら、母の職場にお金と診察券を取りに行く。

母「お前、何歳になった!?職場の人に代わってもらう時、小さな子供から電話が来たと言われたよ…恥ずかしかっ……て……なんじゃこりゃ!?」

0w0(仮)「……痛い。゚(゚´Д`゚)゚。……」←半ベソ

母の職場近くにかかりつけの整形外科があったので、よく行く場所だったので、ひとりで行き。
見事に”折れている”と、診断。

とにかく痛みが凄かったので、すぐに痛み止めを飲ませて貰いました。

ギブスを作っている間、シクシクと泣く私に看護師さんが優しく、

看護師「ごめんね、痛いよね。ちょっと我慢していてね。」

と、幼児をあやすかのように声をかけるが、私が泣いているのは、手首が痛いからではない。

“全治1ヶ月”

その間、弓道をやる事ができないことが、悲しくて悲しくて涙が止まらなかったのです。

しかし、骨折をしていても、部活には参加していて、できる事をやらせてもらっていました。

私が骨折で弓が引けない間、同期のうち2人が、的前練習に合流していました。

私は、他の人が巻藁練習をやっている時は”道場周りの草むしり”をさせられていたので、指を咥えて、その様子を見ていました。

程なくして、ギブスは取れ。
すぐには弓を持たせて貰えませんでした。

しかし、ギブス外れて3日目、状況は急展開します。

T監督「医者がいいって言ってんだから、弓持たせていいだろう。」

部長に、ハッキリそう言っていたのが聞こえました。
そして、部長から、巻藁練習の許可が降り、すごく久しぶりに、同期のみんなと巻藁練習に合流。

その日の午後。

部長「T先生が、0w0(仮)の的前デビューやってみよう、って言っていたので、午後から的前やります。一緒に着いていてあげるから、準備していてね。」

0w0(仮)「はい。(マジか?)」

こうして、同期の中では3番目で的前デビュー。
手に違和感はあったけれど、初めて立つG高校の射場からの景色と空気感は少しピリッとしていて、爽やかな風が吹いていました。



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