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出待ちにかける想い

ある日のソワレ終演後。客席から出ようとするギュウギュウ詰めの列に並んでいると、すぐ後ろから「今日、待つ?」と声がしました。
若い女の子の声だったので「出待ちの話かな」と思いました。すると話し出した子とは別の声が、こう応えました。

「どうしようかな。でも、プレゼントを持って帰ってくれたのか確認したいよね」

その後すぐに客席からロビーに出て列が崩れたので、女の子達が結局どうしたかは分かりません。声しか聞いていないので、どんな子だったのかも分かりません。
けれど、「プレゼントが好きな俳優の手に渡っているか確認したくて出待ちをする」という理由が強く印象に残りました。出待ちをするような人はアグレッシブなイメージが強かったので、そんな細やかな想いで出待ちをすることが意外だったのです。
原動力は間違いなく好意だと思いましたし、出待ちをしないとそれさえも確認できないことが、なんだか切なくも感じました。きっと一生懸命に選んだプレゼントなんだろうな……。

ですが、出待ちはしない方がいいと思います。

例え話になりますが、職場の上司や取引先の方が断りもなく終業後にビルの前で自分を待っていたら怖いし、正直に言って気持ち悪いです。声をかけられなくても嫌になります。度を超えるようなら周囲に伝えて解決しますが、仕事に関わることならストレスを感じつつも心に秘めるでしょう。

優位性のある立場からプライベートに踏み込む行為されて、いい感情を抱く人はいないと思います。ファンとして見守るのを許されているから錯覚するのかも知れませんが、自分の向けた好意が返されなくて他人に対応を要求したり待ち伏せするのは、承認欲求を満たすためのストーカー行為でしかありません。

自分の想いを受け取って欲しいと望むあまり、折角の好意が利己に塗りつぶされなければいいな……と、他人事ながら心配になりました。芸能人が人気商売であるとはいえ、相手が人間である以上は誠実に向き合っていきたいですよね。

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