『本日は、お日柄もよく』を読んで、原点を思い出した
先日、我が家・つくる邸でオープンデーを開いた際に、おすすめの本を置いて紹介する「選書コーナー」を設けました。
ぼくと、同居人の岩本くんと、最近知り合った建築設計士・中川宏文さんの3人で。
中川さんは、落ち着きがあって、とても話しやすいお人柄でありながら、とっても勉強家で博識なお方です。設計士としてはもちろん、地域おこし協力隊としても活躍されていた、スキルフルな人物。
歴史や哲学についてかなりの数の本を読まれており、オープンデーの日に合わせて、その方が厳選(?)する本が数冊我が家に送られてきました。
原田マハさんの『本日は、お日柄もよく』は、その中に含まれていた1冊。
当日、中川さんはその場にいませんでしたが、オープンデーに来ていた子が「これ読んだことあります。面白いですよ」と教えてくれて、手に取ってみたことが始まりでした。
内容は、「スピーチライター」のお話。裏面には、お仕事小説と書いてあります。
読めば、自分と同じ「ライター」でありながらも、毛色の違う「スピーチ」専門のライターのお話。
結婚式や選挙演説など、さまざまな場面でのスピーチを主軸に展開されていく、「言葉」と「想い」の力を鮮やかに・軽やかに描いた作品でした。
いやー、面白かった。
駆け抜けるように読み終えた。
原田マハさんのお名前はよく見ますが、こんな作品を書かれるんですねぇ。知りませんでしたが、この本に出会えて本当に良かったです。
主人公・こと葉は、物語の後半、政権交代を掲げる野党サイドのスピーチライターになります。挑戦者であり、攻めと守りで言えば攻めの方。
対する与党サイドは、組織の固定票で長年政権を維持してきた守りの立場。
長崎ではつい数ヶ月前に激アツな選挙戦を終えたところで、この構図はその選挙にとてもリンクするものがありました。
また、推しの議員の決起集会に足を運び、ぼく自身スピーチがもつ力を肌で感じていた経験があったおかげで、この本を読みながら反芻することもできたんです。
分かりやすく、簡潔に描かれており、政治のことに詳しくないビギナーが読むには持ってこないな作品ですね。
「政治」ではなく、「スピーチ」が主軸だったから読めたんだと思います。
そして、もう一つ、ぼくがこの本に出会えて良かったと思う理由。
それは、ぼくが「言葉の力」にふれた原点は「スピーチ」だったから。
2014年、大学生1年生になったぼくは、震災後の東北地方にスタディーボランティアへ行きました。その時の経験や葛藤を、「長崎ハッピーフェスティバル」というチャリティイベントの中で、魂こめて皆さんにお話させてもらったのです。
本を読みながら、「あぁ。そうやった、そうやった」と思い出すことができた。
いや、ぼくにとって間違いなく大事な体験だったことはよく理解していました。
しかし、それが今のライターという生き方に、どう活かされ、どうやって繋がっているのかが分かっていなかった。自分の中でうまく整理できていなかった。
だから、正確に言えば、「スピーチがぼくの原点なんだ」と思ってもいいんだと、そんな風に自分で自分を肯定することができたんです。
この体験があったから、何かを伝える仕事がしたい、言葉で大切なことを伝える生き方をしたいと思うようになったんだ。
言葉の形は、「話す」から「書く(読む?)」に変わったけれど。
ぼくは「話す」ための言葉も書きたいかもしれない。
スピーチライターって、おもしろそう。いいな。それ、やりたいことかも。
本を読み終えた読後感と、スピーチライターへの興味が沸々と湧いてきて止められません。根拠はないけど、向いてる気がする。
おまけに、もう一つ思い出話。いまだに忘れられない、大学の卒論発表会のこと。
最後だし、みんなに負けんとこって思って、結構練習しました。ここのゼミはぼくが途中から入ったゼミ。みーんな優秀だから頭もいいし、コミュ力も高い。もちろんプレゼンもうまい。ちょっとした劣等感みたいなものもあったかな。
だから、内容は何度も推敲したし、何回もプレゼンのシミュレーションをして。
臨んだ本番では、その成果もきちんと出せて、手応えはあった。
その夜、打ち上げの時に、そこまで仲良しってわけじゃない後輩が話しかけてくれて、「森さんのプレゼンに感動しました」って言ってくれたんです。
普段はおちゃらけた愉快なキャラの後輩が、そんなことをわざわざ言いに来てくれたのが本当に嬉しくて、今でもよく覚えています。
4年間いろんな経験をして、東北のプレゼンをした当時よりももっと「伝える」ことの大切さを理解していた自分が、その集大成をみんなに見てもらえた気がしました。
別にこれに勝ち負けなんて無いけれど、確実に1人に伝わっている、それだけでぼくの自尊心を満たしてくれた。可能性を感じさせてくれました。ありがとう。
スピーチライター。機会があれば、やってみたい。
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