贔屓の退団に寄せて

今日は研究やら留学やらスイスやら博士課程の問題やら、そんなこととは一切関係のないことを書きます。

もしかしたらそのうち非公開にするかもしれません。
あとから見返したら、何を書いているんだと自ら穴を掘ってしばらく埋まってしまうような内容になるかもしれません。
でも、いまこの時この瞬間に心に溢れている思いを、想いを、なんらかの形で吐き出しておきたい。残しておきたい。

せっかくいただいた貴重な留学の機会を、「来なきゃよかった」なんて思いたくない。

そのために、心の赴くまま描いていこうと思います。


2020年2月17日。
宝塚歌劇団雪組トップスター・望海風斗さんと、トップ娘役・真彩希帆さんの退団が発表されました。

私は、何を隠そう、望海風斗さんの大ファンです。
そして真彩希帆さんも大好きです。

思えば2014年8月31日の花組公演エリザベート。
あれだけのチケット難公演を、たまたまご縁で観劇させていただきました。
宝塚は初観劇。その時は煌びやかさにただただ圧倒されていた。
そして男臭く歌がうますぎるルキーニ役の人が気になった。

もともとヅカオタであった友達から色々と教育を受け、2015年1月のルパン3世を観劇する頃にはすっかり望海風斗さんのファンになっていた。

出演される公演には、時間とお金の許す限り通った。

トップスターに就任され、まあやちゃんと繰り広げる上質の、最高の、そして天井知らずで日々進化していく歌声を幾度となく生で聴けたことは、これ以上ない幸せだった。

歌に注目されがちな2人だけれど、お芝居もダンスも素晴らしい。
大劇場に通って何度涙したかわからない。

魂の奥底から全身全霊で紡ぎ出される歌、芝居、ダンスすべての事柄を全身で吸収して、満たされるこの上ない幸福感。

誰よりも出番や歌、セリフが多いのにいつでも全力で、「宝塚が大好き」という想いを全身で表現されるお二人に、好きなことで生きていく素晴しさを教えてもらい、そのために必要な苦難を乗り越えるための勇気をもらっていた

最後まで応援しようと思っていた。
宝塚男役としての最後の1日まで一緒に走っていこうと思っていた。

留学の話が出た時、望海さんの退団公演を観られないかもしれない、と思った。
もう1年ずらして、学位をとってから留学しようかとも考えた。

でも、自分の人生を投げてまで応援するのは何か違うと思った。

自分の人生の結果を贔屓のせいにしたくなかった
あの時追いかけずに留学していたら…なんて思いたくなかった。

だから、宝塚の男役としての最後の1日を観られないことは、こっちに来る前にある程度覚悟していたつもりだった。

若手研究者海外挑戦プログラムは、冠婚葬祭と学術的理由以外の一時帰国を原則禁止している。
なので、お正月公演のOnce  upon a  time in Americaは観られなかったし、5月のコンサートも観られない。
帰国予定は10/31なんだけど、退団公演が10/11までというニアミス。
だからおそらく、退団公演も観られない。

覚悟していたとはいえ、いざ退団が発表されるとやっぱり観に行きたい。
宝塚歌劇団男役の望海風斗さんを目に焼き付けたいと思ってしまう。

いつも通学で聞いているこれまでの望海さんの歌声を聴くと、今にも日本に戻りたくなってしまう。なんなら泣けてくる。
それでも聴かずにはいられない。

でも、実はもっと実験や研究が手につかなくなるかと思ってたけど、あまりにやるべきことが多くて、考えるべきことも多かったもんだから、脳内キャパのほとんどを現実的なことが占めてくれていたおかげか、黙々と解析を進め、発表を聞き、ラボメイトと将来について話をして…通常営業ができていた不思議。

それでもやっぱり今すぐ観に行きたい。近くで観ていたい。
集大成を隅から隅まで観たいと思ってしまう。

あれだけの実力者をミュージカル界が放ってはおかないだろうと思いつつも、そういうお仕事を続けてくださるかどうかはご本人次第ですし、いずれにせよ男役はもう観られない。

今日ほどどこでもドアが欲しいと思ったことはないです。
もしくはテレポート能力。
あとスイスでもライブビューイングやってほしい。

でも現実はかわらない。
遠く離れたスイスでできることは、ただただ最後まで無事に舞台を全う出来るよう祈ることだけ。
後はお手紙を書くこと。

想像もできないほどの多望なスケジュールに、聖火ランナーまで務めるという激務を退団公演の直前にされることがわかっているので、どうか怪我などなく、無事に宝塚人生を全うして欲しいと願うばかり。

そしていつの日か、
「あの時の留学があったから今の私がある」
「望海さんとまあやちゃんに好きなことで生きていく素晴らしさを教えてもらったおかげで今がある」

と言えるように、これまで以上に真摯に研究に向き合って、自分的にはスイスに来てからの一番の精神的ハードルをしっかり乗り越えたいと思う。


それでも今日は、今日だけは、望海さんとまあやちゃんの歌声に包まれて、何も考えずに心を望海さんのもとに飛ばして過ごしたいと思います。


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