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スイスの45分授業と日本社会

スイスに来てから「まずは英語に慣れるために」ということで滞在先の教授が持っているEvolutionally Biology (進化生物学)の講義を受けていました。スイスの大学院の講義がどんな感じなのか、また講義を受ける中で感じた日本のことを書いておきたいと思います。
(*あくまで私が受講した1講義の形式です。一般化はできませんので悪しからず)

講義概要

この講義は火曜から金曜までの週4日、3週間に渡って開講されています。
火曜日は午後だけ。水木金は1日(午前が講義で午後が実習)。
オムニバス形式になっており、6人の教授が交代で授業と実習を担当します。
1コマずつ違う講義を受ける日本の講義形式に慣れた私からすると、まるで集中講義を3週間受けているよう。
対象は学部3年生から修士1年生。
内容は、生物系学部や遺伝学をやっている研究室では(多分みんな)勉強する(だろう)ダーウィンの進化論から木村資生の中立説、ハーディー・ワインベルクの法則などなど、進化や集団遺伝学に関するあれこれ。
学部生向けの内容ということもあって、知っている知識を英語に置き換える時間になっていました(集団遺伝学のコアな部分で出てくる数式の理解にはかなり苦しみましたが。。。)
来週、期末試験があるようです。私は試験を受けない(単位がいらない)のでのんびりしてますが、単位を取らないといけない学生さん、特に学部生はかなり必死になっている模様です。

45分授業!?

11月5日(火)。13時から講義が始まって、ウニャウニャと内容を聞いていました。
最初のパートが佳境に入ろうかという13:45頃。教授が言い放ちました。

さて、15分休憩しますかね。14時から再開します。

え、まだ45分しか喋ってへんやん?おじいちゃん先生だからのんびりなのか?
なんて思いながら、2日間その先生の講義を聴き終えたわけです。

で3日目。オムニバスなので2人目の教授が登場。やっぱり45分で休憩が入るんですよね。どの先生でも、日本人の教授でも、しっかり休憩が入る。
休憩時間にほとんどの学生がお菓子を食べている。Cafeteriaでコーヒーを買ってきたり。人によってはモグモグしながら15分後の講義を聴き始めたり。
どうやらスイスでは、学校も職場も45分~50分で休憩を入れるのが一般的なようです。休憩が入らないとかなり文句を言われるそう。

日本の大学では1コマ90分、高校は変なとこで1コマ65分だったので、45分~50分の授業は多分中学生以来。
博士課程に進んで以降は講義を受けることがほとんどなくて、おとなしく座学を受けることが苦痛になりつつあったので、適度に休憩が挟まるのはありがたかったです笑

実習の時間

実習は、それぞれのパソコンを使って集団遺伝学や進化に関する解析をやってみようという時間。
私は単位がいらないのと、これまでに使ったことがあるソフトウェアの使い方だったり、やったことのある解析手法のおさらいにしかならなかったので、午後の実習は出ずにラボで実験したり論文書いたりしてました。
時たま受講生が解析の質問に来て、ラボのPhDの学生が答えていたりします。

うちの大学では実習といえば「農場実習」で牛の世話をしたり田植えをしたりするか、「学生実験」という名の基本的な実験技術を経験する授業しかなかったので、実習で自分でスクリプトを書いて、プログラムやソフトウェアを回して、講義で得た知識をすぐに実行できるシステムはなかなか素晴らしいな、と思っていました。

日本人は働きすぎ問題

スイスに限らず、これまで何度か国際学会とかで海外に来て思うことです。
バー以外のお店(スーパーとか)は20時に全て閉まります。役所は18時くらいまで。どれも7:30くらいから開いてますが。日曜日は法律でお店を開けてはいけないことになっているので、(空港と大きな駅以外は)全部お休みです。
ラボメンバーは大体9:30~10:00頃にやってきて、17:00にはみんな帰っちゃいます。1時間に1回必ず休憩をする。家族が不調ならすぐ帰る。洗濯しないといけないから帰る。
郵便物を届けた時に不在なら、不在票が入るんですが、再配達のシステムがないので、指定の期日までに郵便局に取りに行かなければいけない。
それでも社会がきちんと回っているわけです。
日本みたいに「長時間働くことが正義!」なんて風潮はなくて、むしろ"要領の悪い人"扱いを受けそう。

私も、日本にいた頃はラボ滞在12時間以上が当たり前だったりもしました。
今は、急な気候の変化(瀬戸内の温暖湿潤な気候から寒さと乾燥の激しいスイスへ)で体調を崩しそうな気がして用心していることもあって、体の不調に真摯に対応して、人間的な時間に帰宅して、毎日睡眠をしっかりとっています。
だからと言って研究が進まないわけではなく、むしろ考えたり論文を書く時間がしっかり確保できるので、質の良いアウトプットができそうな予感がしています。
なので、私は決して要領のいい人間ではないですが、それでももう少し計画的にうまく時間を使えばあんなに長時間ラボにいる必要はなかったな、と思います。

日本って全体的に過労状態な気がするんですよね。
深夜にコンビニが開いているのは確かに便利です。Convenienceというだけあります。日本の住所は繁華街にあるので、その恩恵は多分に受けてきました。
でも、試しに21時以降は店を閉めるとかしてみたらいいんじゃないですかね?
買い物するためには帰らないといけなくなりますから。
「働き方改革」とか言っておきながらサービス残業が横行するようでは難しいかもしれませんが、国全体が疲弊している今、消費税的なところだけ欧米諸国の猿真似をしてさらに人々が疲弊するくらいなら、こういう部分も見習ってみたらいいとおもう昨今です。

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