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「三日間の幸福」著:三秋 纏
面白かった。最初は病院の待合で読みながら何日かかるかと思っていたが、帰宅後も続きが気になってしまい当日中に読了してしまった。夕飯の支度が一時間遅れた。
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「時間ですか?健康ですか?寿命ですか?」
「寿命を買い取ってもらえる」という話を聞いた、自分こそ特別と思いながら人生を燻ぶらせる大学生、クスノキ。三時間の査定で出てきた価格は余りにも安かったが彼はその寿命に見切りをつけ、余命三ヶ月と三日を残して丸ごと売り払ってしまう話。
二十歳ならではの世界が頭打ちしてしまったような感覚には身に覚えがあり、心の奥を刺してくる。自分の限界と世界の限界に絶望を覚え、それでも「いいことがあるかもしれないから」そのまま日々をやり過ごす鬱屈感。似たような事を考えて生きていた時期はあるので(というか今も大差ない気はする)、自分の過去を思い軽いめまいを覚える。
そして少しのきっかけで視野が変わり世界の広さを思い知る瞬間。これも自分の思い出とリンクする部分があり眩しい。何かが噛み合いさえすれば、世界はいつでもその美しさを見せてくれるものだと思う。
『俺』による一人称の文章はところどころ違和感があったが中盤にちょっとした種明かしがあり、幕引きに至って説得力が大きく増した。他にも、序盤の描写が終盤で意味を持ってリフレインし、謎解きというにはささやかだが、ミステリめいた「そこが繋がるのか!」という仕込みがいくつも発見できる。
「……さて、答えあわせといきましょうか」
監視員のミヤギについては「可愛らしい」という感想に留めておきたい。未来に絶望した学生が自暴自棄を経て彼女に出会う物語でもあるので、とても重要な人物ではある。
「今日はどんな風に過ごすんですか?」
タイトルは原題『寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。』から変更されている。原題はこれから読む人に向いていて、文庫本の改題は読了後の余韻に寄り添うものになっている。原題の、物語の書き出しから抜き取ったような響きも悪くないが、読み終わってしまった今は改題後の方を支持せざるを得ない。読み終わった人であれば、『三日間の幸福』についていくらか思いを馳せる事になるはずだ。
ラストは紛れもないハッピーエンド。読者を置き去りにする勢いで幸せになっている。
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この本を買ったきっかけは以下の記事にて。素敵な紹介ありがとう。
初めて知る作家だったが、贔屓のメディアワークス文庫からということもあり買ってみる気になった。
noteではあまり積極的に記事を追いかけていない。ただ、肌に合う文章に出会えそうという期待は持っている。
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