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過去を磨く(1)

 これから自分が何をしたいのか考える前に、私の過去について振り返ってみたいと思う。 

 前の投稿にも書いたが、私は大学四年間の全てを部活動に捧げた。
”捧げた”という言い方をするとカッコよく聞こえるが、要は勉強をせずに好きなことしかしなかったということだ。

 大学に入学する際、これから私が過ごす4年間は、長い長い人生の中でも、自分の思い通りに時間を使える唯一かつ最後の機会だと思っていた。勉強したっていい、サークルに入って毎日飲み歩いたって誰も文句言わない、旅に出たって単位さえ取れれば親もニッコリ。私は好きなことを好きなだけしようと考えていた。そんな中、最も私を惹きつけたのは何故か不自由度の高い部活動だったというわけだ。

 選択の理由は今更覚えていない。”大学からスタートする人が多いスポーツでスタートラインはみんな一緒だから頑張り甲斐があるな”とか"チームの雰囲気良さそうだな"とか"中途半端にやるよりはガチでやりたいな"とか、多分その程度のありきたりなものだったと思う。

 どの組織にも研修期間のようなものはあると思うが、例外なく私の部活にも存在し、初めの一ヶ月を”仮入部期間”と称して、この組織がどんな雰囲気でどんな練習内容で活動を行っているのかを体験する期間があった。

 大学のグラウンドは他の部活動も使用することから、練習は確実にグラウンドを確保出来た朝7時前後に開始された。先輩らは当然文句も言わずに時間通りに練習に来るが、新入生は仮入部期間での練習参加は自由だった。
そのため、入部予定だった同期は「来れる日は練習に来る」といった感じで、飲み会も好き放題やっていたが、中途半端が嫌いだった私は特別な用事がない限り毎日練習に参加し、練習に励むことにした。友達作りには一番大切な新歓期間だったにも関わらず、翌朝6時には起床しなくてはならないことから、学部やサークルの新歓飲み会は断り、夜11時には就寝するといった具合だった。

 仮入部期間が始まり半月が経とうとしている時、私はふと思った。

「自分は朝早くから何をしているのだろう」と。

 同じ学部の友達は、僕が部活をしている時間に友達を作り、楽しい時間を過ごしているかもしれないし、一生懸命勉強に励んでいるかもしれない。そのうち留学だって行ってしまうかもしれない。体を動かすことは好きだけど、単に健康維持のため、単に就職に有利だからといって部活をするなら、いっそ辞めてしまった方が自分の人生にとってプラスになるのではないか。

 そう考えたりもした。

 自分が部活に熱中することへの意味が見出せずに悩んでしまった。

 半月色々頭を悩ませて考えた挙句、僕が出した答えは「自己成長」だった。仮入部期間が終わり、正式に入部するときに「四年後に必ず日本代表になり、自分の可能性を証明する。」と自分自身に誓った。周りの同期や当時のコーチにもそのように伝えた。

 大学生としての4年分の計画を立て、「今日練習をする目的」を毎日胸に落とし込むように心掛けた。そして”今日は日本で一番練習した”と自信を持って言えるくらい練習した。
上手い人のプレーをビデオに録画し、真似して、練習し、反省し、改善して練習する。これの繰り返しばかりだったと思う。毎日、とにかく自分自身と向き合い、常に最終目標を意識して練習していた。(夜の公園で真っ暗の中一人で練習していて近所の人に警察に通報されたことが何度もあった。今となってはいい思い出だ。)

 初めは無理やり意識するように心掛けていたが、一ヶ月も経つとそれは歯を磨くのと同じように、毎日の習慣へと変わっていた。全体練習がない日も、授業後に疲れていたとしても、雨が降っていたとしても、言い訳せずにグラウンドに足を運んで練習しなくては気が済まなくなっていた。周りからは奇妙な目で見られていたが、着実に上手くなり、大会で結果を出し、優秀選手賞を受賞したりする私に対して徐々に周りからの期待も高まっていることは確かだった。

 当然上手くいくことばかりではなかった。私の同期は体格に恵まれており、努力する才能を持つ連中が集まっていたことから、同期内でのポジション争いも他の学年と比較しても(おそらく他の大学の同期と比較しても)圧倒的に熾烈だった。チームスポーツだったので協力すればいいものの、何故か張り合い、結果的に「どれだけ努力しても球技センスでこいつには絶対に適わないな、、」と思うような同期もいた。そんな時は自分を活かせる場所を模索し、ポジションを変更したりしてみた。(その結果、3年の時にそのポジションで全日本の代表候補にまでなれたので結果オーライである。)

 「今日練習をする目的」は学年が上がり、チームを代表するような立場になっていくにつれて重みが増してきた。

 自分への期待が大きくなっていることだけでなく、一緒に戦っているメンバーや、プレーヤーを諦めてサポートに回ってくれるメンバー、試合の時にスタンドから大声で応援してくれるメンバー、さらには支えてくれているコーチ陣やスタッフ陣の存在を感じるようになっただと思う。

 気が付けば、そんな人たちへの想いを背負って、主将としてチームの勝利のために努力している自分がいた。

 最初は自分だけのために始めた部活が、いつの日か他の人のため、チームのためへのものになっていた。当然、主将としてチームのために行動することも増えていた。この部活が、技術的にだけでなく、人間的にも僕を成長させてくれたことを実感した。

 結果的に、入部時に私が掲げた「日本代表になる」という目標は達成することは出来なかったものの、この部活動での4年間は貴重な経験を僕に与えてくれた。僕のやり方が全てではないけれど、何か大きな目標を持ち、弛まぬ努力を続けていけば、どの道に進んだとしてもきっと価値ある経験を与えてくれるのだと信じている。学生スポーツにおける4年間は、何かを犠牲にしてでも熱中するだけの価値があるし、それは必ずその人にとってかけがえのないものになる大きな可能性を秘めたものだと思っている。

 

ありがとう。ラクロス。


Tom

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