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アラフェス2020で嵐5人が見ていたのは、過去だったのか?未来なのか?

 日本時間の2020年11月3日、嵐のCDデビュー日に、新国立競技場で嵐のライブ配信が行われた。私はファンクラブ会員ではないので、パート2の配信を視聴するのみだったけれど、ファンクラブ会員の方は「嵐の日」を楽しまれたことだろう。どれくらいの人が見たのか、現段階で数字は出ていないけれど、日本国内だけでなく、私のように海外から視聴した人もたくさんいるはず。

 言わずもがな、素晴らしい配信だった。正直に言って、ただ配信ライブをするのに、あんな約7万人も入るどでかい会場はいらない。コスト面を考えれば、本当に要らない。でも嵐にとって、約束のライブだった。2020年5月に行われるはずだったファンとの約束を、守ってくれたということだ。

 パート2のライブに関していえば、前半と最後の、しっかりライブ感を楽しめる、ジャニーズコンサートらしい演出と選曲は、まず嵐らしい!と思った。中盤は、オーケストラをリモートでつないで、楽曲の壮大な世界観を見せてくれた。事前収録を配信するという形なので、何度も衣装を着替えて、何度も違う嵐を楽しめた。さらに事前収録をしたからこそのAR演出で、会場がゲームの画面みたいになったり、急に客席が海になったり、びっくりさせられた。何台も入っているカメラのおかげで、最前列で見ているように詳細が楽しめるし、おそらくドローンでの撮影だろうけれど、引きの映像、国立競技場の上空からの映像も良かった。事前収録の日を特定してしまった、あのド派手な花火と何千もの風船が飛んでくシーンは、上空から取っているからこそ綺麗だった。本当に、ひとときも飽きさせない90分。

  ところで、私はNetflixの嵐ドキュメンタリー「Arashi's Voyage」も欠かさず見ている。アラフェス直前に配信された17話が、アラフェス開催までを追ったストーリーだった。その中で、とても印象的なシーンがあった。2020年8月、ジャーニーズ事務所の方針で、10月まで観客を入れるコンサートは無理だろうという決断がでていた。そして、無観客のライブを催行するかどうかは「アーティストの判断」による、と事務所の方(嵐のマネージャーさん?)が嵐メンバーに告げた。アーティストにも、スタッフにも、お客さんにも、無観客ライブはストレスがかかる。だから事務所ではなく、アーティストが、催行するかどうかの判断を決めて良いというのだ。その時に私ははっとした。そうか、無観客というのは、アーティストにもストレスなんだと。当たり前と言えば、当たり前。だってお客さんの声援や拍手、応援があってこそ、演者はがんばれる。日本のスポーツは見ていないけれど、アメリカもいよいよ、アメリカ人が大・大・大好きなアメフトが始まったが、ほとんどの試合が無観客なので(観客を入れてもキャパの20%まで)、ホームゲームだろうが、応援が全くない。それで結構な番狂わせが起こっている。音楽に当てはめたって、そういうことだ。

 ちなみにNetflixのドキュメンタリーでは、その事務所の方とのミーティングで、意外にも櫻井翔さんが、駄々をこねるように呟いた。「やりたいなあ、やりたい」嵐メンバーの中では、一番大人で、一番聞き分けがよさそうな人が、子供みたいにそのセリフを放った。それくらい、ご本人たちも楽しみにされていたことなんだなあ、と思うと、切ない。

 さあ、いよいよ、七万人の空席を前に、嵐のショーが始まるとなった時、私はなんだか祈ってしまった。私などが心配したところでどうにもならないし、彼らは21年間、いやそれ以上の長い時間をショービジネスに費やしているプロだ。心配なんて杞憂にすぎない。でも、それでも祈ってしまった。7万という膨大な数の空席を前に、どうか彼らの心が折れませんように。だからだろう、彼らのステージよりも、歌よりも、演出よりも、何よりもずっと彼らの視線を追ってしまった90分だった。

 実際この壮大なショーの最中、彼らは非常にリラックスして、ステージを楽しんでいたように思う。歌番組の歌唱のように、そしてライブでも映像作品を残すための撮影時のように、時にはしっかりカメラ目線で歌い、踊る。櫻井さんおなじみの「上の方!」が聞こえて、観客を煽るセリフが続く。悲鳴にも似た歓声が聞こえているかのように、指先が、視線が動く。きっとカメラで追われていることはわかっているだろうに、あえて客席のずっと向こうに視線を向けて歌う。MC中に、大野さんが言った。すべての客席に貼られたLEDライトを見て「みんなが止まっているみたい」と。(つまり、お客さんがストップモーションで止まっているだけに見える、ということ。)相葉さんも、ファンたちが掲げるあの「うちわ」が見えるようだ、と言っていた。

 そうか、彼らは現在にいながら(もっとも映像の中の彼らも1週間くらい前の彼らだけど)過去を見ているんだろうな…と私は思った。それは、経験というやつだ。何千回も行ってきたコンサート、その経験があるから、目の前にお客さんがいなくても、あの歓声を、拍手を、熱を、しっかり自分の中で再現してる。「あの特別な空間」に陶酔するように、汗をかける。本当に、彼らはプロなんだなと、ものすごく当たり前のことで、いたく感心してしまった。

 けれど同時に、彼らが見つめた景色が、未来であってほしいなとも思う。2020年に叶わなかった夢の続きを、いつか見て欲しいなという…個人的な願望なのだけれど。

 ライブの最後の3曲は、シングル曲の人気投票3位までの曲。3位「A・RA・SHI」、2位「感謝カンゲキ雨嵐」そして1位が「Turning Up」だった。1位の曲が意外だったけれど、最後の歌唱がこの曲で良かったと思う。もし「A・RA・SHI」や「感謝カンゲキ雨嵐」だったら、歌う方も、聞いている方もぐっときてしまうから。「Turning Up」で楽しく、笑って終われたのが良かった。そして最後の最後に、松本さんが「いろいろあったけれど、ライブができて良かった」と笑った。その「いろいろ」という、たった4音に、どれほどの思いや努力、時間が込められているのか、我々には想像もつかない。ただ、最後に笑ってくれてよかった。そこで私は、一番ぐっときてしまった。とにかく、笑顔があふれるライブで、本当に良かったと思う。


#音楽 #嵐 #アラフェス2020 #エンターテイメント #配信ライブ

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