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歌詞はどこから書くのが正解か?

 先日、2年くらい前に書いた1番の歌詞の続き、2番を書く機会があった。(これってラッキーなことなのです。)楽曲コンペのデモ曲というのは、わりと1コーラス(いわゆる1番)とか1ハーフ(1番とDメロや落ちサビなどがつく)という長さでつくるので、数年後に歌詞の2番を書けと言われても、当時のことなんて忘れてしまっていて、2番を書くのは難しい、と言う作家さんも多い。私は、そうでもないと思っている。まあまあ良く書けた歌詞は、わりと歌詞の設計図がしっかりしていて、こういうこと言いたかったんだなとか、こういうことやりたかったんだなというのが、すでに1番に梱包されている。だからその設計図を基にすれば、2番はわりと苦労せず書ける。そう、歌詞には設計図がある。

 自分の書いた歌詞の設計図はもちろんだけれど、時として他人の設計図もわかるときはある。だいたい、詞先でつくられた曲というのはすぐわかる。これはメロディーとの兼ね合いでもわかるんだけれど、詞先の歌詞というのはとにかくメロディーに捕らわれない自由さがあるのだ。では、曲先で書くときは、どういう設計図にすればよいのかというと…正解はない。お好きなように!なんだけど、今日は私の場合の書き方を振り返ってみようと思う。

 まず、絶対に最初に取り掛かるのはサビ頭。これはもう鉄則。だけど、気に入った言葉がサビ頭に入らない時もたくさんあるから、サビ頭に取り掛かるけど、サビ終わりの方が先にできるときもある。だいたい、曲はサビが重要で、その中でもサビ頭とサビ終わりが特に重要なのだ。ここが決まれっていれば、たとえ途中がまあまあだったとしても、よい歌詞になる可能性は高い。とにかく言いたいこと、伝えたいことがきちんとサビに収まるかが一番気を遣うところ。だからサビには時間をかけて、しっかり練り上げる。

 サビができたら、次に歌頭(Aメロ頭)に取り掛かる。ここも重要箇所。最初にどれくらいリスナーを引き付けられるかというのが重要なのはあるのだけれど、それ以外の理由もある。この歌のストーリーの長さを決めるのは、Aメロ頭だ。サビというのは、ストーリーが展開される場所ではない。サビは心情やら言いたいことやらを詰める場所。ではこの歌のストーリーがどのくらいのスパンを歌うのか、が決まるのがAメロ頭だ。

 例えば、サビでは窓から見える「星」を歌うことにしよう。星を見て、まだあきらめられない気持ちが、夜の真ん中で星みたいに輝いてる。ってなことを歌うとしよう。じゃあ、このストーリーはどこから始めるのが効果的?

①Aメロ頭:朝 
起きてから、今日一日がどんなにうまくいかなかったかを並べていく

②Aメロ頭:夕方
一日が終わって、家路につく。人混みを歩きながら、今日もうまくいかないことがあったなと振り返る。

③Aメロ頭:夜
ベッドに入っても眠れない。ふと起き上がって外を見る。星がキレイだ。

Aメロ頭をどこから始めるかによって、サビまでにたどり着かなければいけないストーリーの長さが決まる。Aメロ・Bメロの長さによって、そこまでストーリーを詰め込めない時もあるから、ここが一番「勘」を働かせなければならないところ。「あたり」をつけなければいけないところ。この見極めができるようになるまでは、何度もAメロ・Bメロを書き直した。今ではわりと見極められるようになったけれど。

 そして最後がBメロ。サビというパーツと、Aメロというパーツをしっかりつなげなければならない場所。だからとても気を遣う。だいたい私はBメロで悩んでいる時が多い。Aメロからジャンプしてもサビにたどり着かない時もあれば、距離が近すぎてつまらない時もある。Bメロはいつも悩みどころだ。

 こうして1番ができると、2番もだいたいサビ→Aメロ→Bメロの順でつくってる。ただしバラード曲は歌の最初からつくるときもあるかな。でもだいたいはこういう設計図になっているので、時間がたってから2番を書くのはそんなに苦じゃない。むしろその時の自分に再会できて、結構楽しかったりする。

 さて、歌詞を書く順に正解なんてないけれど…あなたはどんな順番で書いてる?

#作詞 #歌詞 #作詞家

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