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学生最後の夏は1日しか許されなかった。


充電があと17%しかないのに夜の海から帰る電車に揺られながらこのただならない感情を書き留めたくスマホを握っている。あぁそうだ私が書きたかったのはこれだった。

あまり大きな声では言えないがサークルの人達と海に行った。この何気ないことがいかに私を作っていたのか思い出した。二十歳を迎えた頃にあれほど叫んでいたこと、重度の鬱病と双極性障害に追い討ちをかけたコロナ禍のなかで完全に忘れてしまっていた。
 
私は目の前にいるあなたの人間がみたい。
あなたのらしさがみたい。
死ぬほどあなたの人間がみたい。

これをただずっと見ていたかったんだ。たくさんの普通だった日常を2年前の日常が頭の中で湧き出てくる。今では元がついてしまった元彼と話した会話のこと。初めて見た時は機械みたいな表情で何一つ自分の本心も自我もなかったあの時から、ずっと一緒に話していって初めて家族以外にこんなに喋るようになったって言ってくれた時のこと、本当に嬉しかった。濁ったものは嫌いでただただ本物を見たかったそれだけだった。あなたをぎこちなくさせたその窮屈のひとつひとつのピースを剥がしていくこと、それが私のしたいことだ。

言葉を選ばないで良い。取り繕ったもので固めたものなんて不恰好でかっこよくないから。私が信じるもの、あなたが信じるもの、あなたが信じているのがそれなのなら私も一緒に信じるよ。

あぁなんでこんな大切なこと忘れてしまったのだろうか。帰りの電車で隣に座ったサークルのやつと話していた。大学4年の夏の終わりもこの頃。知らない間に社会人になる切符を持つものばかりになって酒飲んで馬鹿してたあの時、と振り返れる数はあといくつ増やせるだろう。4年にもなるのにまともに喋ったことない隣のやつと帰りの電車で話し込む紺色の線路。インスタでもツイッターでも普段の集団の場で見せる顔のどれでもなくて、隣でいつもより2オクターブ低い声で喋るそれの中で見える人間がなによりも好きだった。



学生最後の夏はインスタグラムにBBQと海と花火を載せるはずだった。
学生最後の夏は1日しか許されなかった。

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