見出し画像

【書籍レビュー】#13 「コーヒーが冷めないうちに」 川口 俊和 著

 大人気だと聞いてはいたのだが、なかなかタイミングが合わず、積読になっていた一冊。
 懇意にしている人から再度おススメされたので、重い腰を上げ、本を開くとものの3時間も経たずに読み終えていた。
 それほどに物語の世界へ引き込まれてしまった。

 筆致は柔らかい中にも、何かもの悲しさを感じさせるものがある。だが、それは多くの人生を見てきたからこその、冷静さのようにも感じる。

 とある街の、とある喫茶店。
 この喫茶店には「望んだ時間にいける」という不思議な席がある。

 だが、、、、、、

 条件がめっちゃ厳しい。
 いや、厳しいっていうより、ほぼ、無理じゃね?って思うレベルだ。

 さらに望んだ時間行けるのはいいのだが、その滞在時間の短さよ。
 タイトルにもある「コーヒーが冷めてしまうまでの間だけ」とは、時間にして、おおよそ10分くらいか。
 

 そんな厳しい条件にも関わらず、この店の「あの席」を目指し、今日も来客する人が。

 一人一人には物語がある。
 「あの席」に座る人の理由も人それぞれ。 
 誰もが思い悩み、救いを求め、この喫茶店を訪れる。

 さまざまな人生が描かれる心温まる作品だった。

 私にも戻りたい時間がある。
 こんな条件であったとしても、あの日、あの時にもどれるのであれば、「あの席」に座ってみたい。

 あなたには戻りたい時間はありますか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?