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人と組織の“変容”に必要なこととは?①~『成長を支援するということ』を読んで~

つい先日発刊された『成長を支援するということ』(リチャード・ボヤツィス、英治出版、2024年4月24日)を読んで、今まで関わってきた人材開発・組織開発のプロジェクトや、昨年1年間学んだグラフィック・ファシリテーションで頂いた数多くのフィードバックが思い出された。

いろ~~~いろ感じたことがある中で、自分の思考の整理のためにも下記の項目に分けて徒然にしたためていこうと思う。

①『成長を支援するということ』の要点 ←今回はココ!
②成長支援を阻害するもの ~相手の状況(レディネス)を見極める~
③成長支援を阻害するもの ~自分の状況(思い込み)を見極める~
④自分も相手も、ともに“善く”なるには

「誘導」ではなく「思いやり」のコーチングを。

めっちゃくちゃシンプルかつ乱暴に言うと、全315ページのこの本のメッセージはこれに限る。

従来のコーチングが、

  • 外部からの期待への対応、自分自身の弱みや課題の克服に焦点を当て、

  • 迅速な問題解決を目指していたからこそ、

  • ストレス反応を引き出す可能性が高く変化が持続しない

のに対して、今求められているコーチングは、

  • 自分自身のありたい姿の想像や、強みの自覚が促され、

  • その望む姿への持続的な変化や成長を目的とし、

  • 主体的な変化が持続するように働きかける

ものだと言う。

ここまで読むと、もう10年も前から同じことを言われているよ!と反論したくなるのだが、この本の面白いところは、「あなたのコーチング的な働きかけは、本当に相手のポジティブな感情や生体反応を引き出していますか?」と問い掛けてくれるところ。

詳細は割愛するものの、脳科学的な実験も幾度となく繰り返してきているようで、コーチのどんな姿勢・言葉かけが相手のポジティブな反応(幸福感や無意識の笑顔、溢れ出るアイデアなど)を引き出すのか?を解説してくれている。


思いやりのコーチングを支える「意図的変革理論」

これまた詳細は割愛するが、この思いやりのコーチングを進めていく上で指針となる理論が、著者による「意図的変革理論(ICT:Coaching through Intentional Change Theory)」である。

『成長を支援するということ』(リチャード・ボヤツィス著、英治出版、2024)より引用


1)理想の自分、パーソナルビジョンを探索する。
キャリアプランや目の前で解決したい問題の行く末だけでなく、「どういう人間になりたいのか?」「人生をどのように生きたいのか?」といった問いに対する答えを共に探していく。
家族との関係性や職場でのあり方、仕事や収入など、全てをひっくるめて10~15年後にどのような姿になっていたいのかを語っていくことで、本人のポジティブなエネルギーを増幅させていくことが目的。

2)現実の自分を明らかにする。
ここでよくやりがちなのが、理想の自分と現実の自分との「ギャップ(差)」に焦点を当てて解決を図るアプローチ。ただ、このアプローチだと自分の「弱みや出来ていない所」を見せつけられるため、多くの人は気持ちが沈んでいく。。
そこで本書では、「理想の自分と現実の自分が既に一致している領域を特定するための手助け」をすることが重要である、と述べている。その領域は相手の強みであり、理想の自分に近づいていくために生かしていくことができる。

3)学習アジェンダを設計する。
学習アジェンダとは、理想の自分に近づいていくために「どんな実験・実践をしていけばいいのか」を挙げたアイデア一覧のようなもの。
ここで重要なのは、欠点を補う改善プランを並べるのではなく、相手が何をする時に一番高揚するのかを見極め、その行動を実践し続けられるように支援することである。改善はたしかに有用かもしれないが、本人にとって明らかに気が重く変化の持続性が見られない場合が多い。

4)新しい行動の実験と実践を繰り返す。
学習アジェンダが設計されたら、あとは実験し続けられるように奨励するだけ!たとえ意図した結果に繋がらなくてもまったく構わない。失敗したり、期待していた結果が手に入らない事もあるかもしれないが、そこから何が学ばれたのか、次はどんな実験をしたら更に高揚しそうなのかを共に考えていく。

5)信頼できて支えとなる人々とのネットワークから助力を得る。
最後に必要なのは、相手の周囲に「ポジティブな感情を基調とした、人と人との本物の繋がり」が形成されるように支援することである。理想の自分に向かって自身の習慣や行動を変えていくことは困難を伴うからこそ、コーチだけでなく、家族や職場の仲間、尊敬する恩師など、相手の変化を心から応援してくれるネットワークを築いていくことを奨励していく。


私の働きかけは、本当に相手のポジティブなエネルギーを引き出していた(る)のか?

ここまで読んでいくと、やっぱり「前から言われていたことだし、真新しいことは何もない!」と言いたくなる自分もいる。笑

ただ、本書ではことあるごとに
「PEA(Positive Emotional Attractor)」を引き出せているか?」
「NEA(Negative Emotional Attractor)」を引き出していないか?」
と問い掛けてくるので、頭で理解した理論と、実際に目の前で起きている現象との差に目を向けざるを得なくなってくる。。

続きは次のnote.で書いていこうと思うが、本書を読んで、「あの時の自分の働きかけは、理想の状態に持っていこうとがむしゃらだったけれど、結果としてネガティブな感情を引き起こしたり、より頑なに変化への拒否を生み出してしまったな…」と、二つのプロジェクトが思い出された。

本書は、コーチングの手引きとして読むよりも、コーチとして実践している人々が、自分の在り方・関わり方を振り返る材料にしていくといいんじゃないかな?と感じている^^

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