たんぼLOVE「11月」
11月にもなると
天日に干していた稲はすっかり取り込まれ
稲架の組み木もかたづけられます。
田んぼに残るのは、実を取ったあとの藁ばかり。
一束ごとに藁でくくられた藁束が
刈田にじかに置かれています。
よく晴れた日には、いつもの棟梁さんと
昔のことなら何でも知っていそうなおじいさん達が
畔に腰かけ、藁束を作る仕事をしています。
藁をくくるのも藁だなんて
稲には無駄になるところがないのですね。
ある日曜日。
田んぼの中程に棒が「にょこ」っと立てられます。
5、6メートルはありそうな長い棒。
それを芯にして、田んぼじゅうの藁束が
円柱状に積まれていきます。
棟梁さんが3人がかりで、藁塚を作っています。
「わらづか」「にお」「藁ぼっち」
地域によって呼び名も形も様々らしいのですが
この町の藁塚は人よりも高く、
ちょっとした小屋くらいの大きさです。
藁束を積んでいったてっぺんは、
傾斜をつけて細くなっていますが、
それがちょうど屋根みたいです。
童話に出てきそうな素朴な小屋といったところで
これが田んぼに登場すると、毎年気分が上がります。
『増殖する歳時記』には、こんな句が紹介されています。
藁塚をつくるのが下手なお百姓さんだって
いるだろう、というこの句。
この町の藁塚は傾いたりしないので
棟梁さん達は藁塚作りの名人でしょうか。
藁束を積む音が水路をこえて、ここまで聴こえます。
藁塚が作られているのは、だいぶ向こう。
藁束もずいぶん軽いのに。
音がよく聴こえるのは、空気が澄んでいるからでしょうか。
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