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診察台のドキドキ

金曜日、小学生の息子(今日は学校へ行かない)を連れて歯医者さんに行った。治療を受けるのは私だ。
「治療を見たい」と息子が言うが、コロナ対策で入れず。息子は待合室の椅子に座り、折紙で何か作って待っていることにする。



診察室に案内され、診察台に横になった私は身構える。大人になった今でも麻酔の注射が怖い。

子供の頃読んだ本(たしか冒険のお話)で、痛み止め無しで手術をする場面があった。患部とは別の場所に刺激を加え、意識を痛みから逸らすと書かれていて、「なるほど」と思った。

それ以来、歯の治療や注射の時は、手をギュッと握りしめたりして、意識を違う方へ向けるようにしている。
最近その他にも、呼吸で痛みを紛らわす方法も身に付きつつある。

コツは、息が入って膨らむ、動く、痛むなど、体の中で変化する部分を探す。探して「あ、ここが動いてる」と注意を向ける。
私の場合、同時に2ヵ所をはっきり意識するのは難しいので、自然にどちらかの感覚がボンヤリするという訳だ。
今回は手をギュッと握る方で、注射終了。

ほっと一息、麻酔が効いてくるまで待機。
こういうポッと出来た空き時間が、私は好きだ。

緊張していた体の力が抜けるとほぼ同時に、ガラス戸越しに鳩が飛んでくるのが見えた。座った状態だと、診察台から外の庭木がよく見える。
鳩は、庭の隅に置かれた陶器の鉢に、ひらりと降りて縁にとまる。鉢の水に嘴を何度か素早く差し入れてた後、飛びたち、木の枝にとまった。
鳩が飛んできて初めて意識を向けたが、引き戸の向こうは塀に囲まれた小さな庭になっている。

背もたれが倒され、治療が始まる。
「シュイーン、ゴゴゴ…」
これがまた嫌で、今度は呼吸に集中する。険しい顔をしていたのか、途中、先生が手を止め「大丈夫?」と声をかけてくれた。
※口を濯ぐ時は、用心しないといけない。麻酔で唇に力が入らないからだ。
治療が終わり、庭に鳩の姿を探すものの、見当たらなかった。


診察室から出てくると、息子は椅子から立ち上がり、折り紙のゾウを渡してくれた。
私を見て「痛かった?」と聞く。私は治療した側の頬に手を当て頷く。
歯磨きが面倒くさい息子は、何を感じただろうか。


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