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せんせい!

姉(9歳)弟(7歳)は、工作が好きだ。段ボールや空き箱、折り紙を使ってよく作る。
作り終えたときに、いつも気になるのが、工作の時に使うセロハンテープだ。切るのに失敗したもの、貼るのに失敗したものを床に貼るクセがある。あっちこっち床に貼ってあるから、床が光を反射してピカピカしている。

工作中の2人を見ていると、実に真剣な顔つきで、手元を見ている。手の動きと眼差しを見ると、次へ次へ進めようという意志が感じられる。
テープを自分が思う長さで、思う場所に、くちゃくちゃにならないように貼る。結果、上手くいかない場合はペチャッと床に貼るのが一番スムーズにいくようだ。
「ビビィーッ」と引っ張って「ビッ」と切る。
あっ、床に貼ってる…

これまでに幾度となく注意とお願いをしてきた。
「セロハンテープ、大事に使ってね。失敗したのは、床に貼らないでほしい。もし貼ったら、後で剥がしてな」と。
しかし、耳に届いているのかいないのか、また床に貼る。困った。

そこで、今回、セロハンテープを使うときには宣誓してみてはどうかと話した。思いつきだ。

何をどのように宣誓するかというと、甲子園球児の代表が、大会前に片方の腕を上げ、「宣誓!選手一同は~、」と誓うのと同じように、テープを大事に使うことを宣誓する。そういうのは、どうだろう?
二人はこの提案に、「え~」という、素振り。「運動会の時にやってるの見た」「どうやるの」と言いつつも、恥ずかしげに体を斜めにして手を揚げる。「ぼくは、セロテープを…   なんやったっけ?   大事に、ツカイマス…」最後の方は声が小さく聞き取れなかったが、ひとまずヨシとしよう。

その後、おしゃべりしながら工作する二人を、3メーターくらい離れたところ斜め後ろから、じーっと視線を送る。手の指で丸メガネをつくり、そこから2人を覗く。

「ビーッ」とテープを引っ張り、「ビッ」と切る。切ったテープを折り紙に丁寧に貼っている。貼り直そうとクチャッとなってきたが、なんとか貼り終えた。
背後から覗かれていることに、なかなか気がつかないニ人に声をかけてみる。
「大事に使ってるやん、見てるよー」
二人はアッと振り返り、ニッと笑う。

その後、「ビビーッビッからの床ペタペタ」を見かけない。今のところ。
あんなに何度「大事に使ってほしい、床に貼らないで」と伝えても、変わらなかったのに、不思議だ。

「宣誓」と辞書で調べてみると、ちかいをのべること。ちかうこと。
言葉を自分で言い、耳からも聞くことで、はっきりと「テープを大事に使う」が意識しやすいのかもしれない。
しばらく手メガネから見守ろうと思う。


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