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スピッツ歌詞考察(第65回)i-O(修理のうた)


【基本情報】

i-O(修理のうた)
作詞:草野正宗 作曲:草野正宗 編曲:スピッツ&亀田誠治
3分40秒

<リリース日>
2023年5月17日(17thオリジナルアルバム「ひみつスタジオ」)

<収録アルバム>
ひみつスタジオ(2023年5月17日リリース、17thオリジナルアルバム)

【MUSIC VIDEO】

【歌詞】

何度故障しても直せるからと 微笑みわけてくれた
どんな答えなら良いのか解らず 戸惑うのもまた楽しくて
今も僕は温かい

マニュアル通りにこなしてきたのに 動けなくなった心
簡単な工具でゆがみを正して 少しまだ完璧じゃないけれど
可愛くありたいハレの日

愛をくれた君と 同じ荒野を歩いていくよ
ロンリーが終わる時 黄色い光に包まれながら
偽りの向こうまで

忘れさられてく 闇に汚れてく
坂の途中で聴いた声は
再び一つずつ 記憶呼び覚まし 身体じゅう駆けめぐる

愛をくれた君と 同じ空を泳いでいくよ
ロンリーが終わる時 黄色い光に包まれながら
偽りの向こうまで

ちょっと得意げに鼻歌うたってる 頼もしい君に会えてよかった

i-O(修理のうた)(作詞:草野正宗)

【考察】

タイトル画像の整備士の女の子とロボットは、アルバム「ひみつスタジオ」のジャケット写真であり、この曲をイメージした登場人物です。
ロボットの名前は、i-O(アイオー)くん。
機械において、ボタンを押すと動くもののことを「I/O」(アイオー)と呼びますが、それは入出力信号のことで、IN(入力)とOUT(出力)を意味します。
“i-Oくん”という名前は、まさに機械であることにちなんだネーミングです。

ロボットを擬人化し、「もし故障して動けなくなったロボットが感情を持っていたら」という世界観をイメージしやすくするためのキャラクターですが、機械のように働いて疲弊した人間をロボットに見立てて描いた歌詞であるともとれます。
サビで「愛をくれた君」という歌詞が出てきますが、これは「I/O」と「愛を」がかかっていて、“君”がくれた愛は“僕”を元気づける信号(スイッチ)であり、生きる力を与えてくれたという意味ですね。

何度故障しても直せるからと 微笑みわけてくれた
どんな答えなら良いのか解らず 戸惑うのもまた楽しくて
今も僕は温かい
何度打ちのめされ、心が折れて立ち直れなくなったとしても、「私が元気にしてあげる!」と微笑みながら話しかける“君”。
どう答えれば良いのか解らず戸惑ってるけど、それもまた実は楽しかったりする。
おかげで“僕”は今、心に温もりを感じることができている。

マニュアル通りにこなしてきたのに 動けなくなった心
簡単な工具でゆがみを正して 少しまだ完璧じゃないけれど
可愛くありたいハレの日
やるべきことを正しくこなしてきたのに、疲れ果ててしまい、感情がなくなってしまった。
そんな“僕”に応急処置を施してくれる“君”。
完璧な状態に戻るにはもう少し時間がかかりそうだけど、自分の気持ちに正直でありたいと思った、少し晴れやかな日。

愛をくれた君と 同じ荒野を歩いていくよ
ロンリーが終わる時 黄色い光に包まれながら
偽りの向こうまで

孤独が終わる時、幸せの光を感じながら、愛をくれた“君”とこの先も一緒に歩んでいくと決めた。
真実の愛に辿り着くまで。

忘れさられてく 闇に汚れてく
坂の途中で聴いた声は
再び一つずつ 記憶呼び覚まし 身体じゅう駆けめぐる
心が壊れてしまっているときは、良いことも忘れさられていき、闇に汚れていく。
苦しい時に聴こえた“君”の声は、身体じゅうを駆けめぐり、本来の“僕”を取り戻してくれた。

愛をくれた君と 同じ空を泳いでいくよ
ロンリーが終わる時 黄色い光に包まれながら
偽りの向こうまで
孤独が終わる時、幸せの光を感じながら、愛をくれた“君”とこの先も一緒に歩んでいくと決めた。
真実の愛に辿り着くまで。

ちょっと得意げに鼻歌うたってる 頼もしい君に会えてよかった
“僕”を元気にしたからって、ちょっと得意げになって鼻歌を歌ってる頼もしい“君”に会えてよかった。

主人公である“僕”の心は壊れていました。
悪事に手を出さず、仕事も一生懸命真面目にこなしてきたはずなのに、誰にも評価されることはありません。
次第に心動かされることがなくなり、喜怒哀楽の感情も消え去っていきます。
頭では理解しているのに身体が動かなくなってしまったり、哀しくもないのに勝手に涙が出てきたり。
それはまるで、壊れたロボットのようでした。

しかし“僕”には“君”という存在がありました。
“君”は常に“僕”の味方でした。
壊れて動かなくなったロボットのような“僕”にマッサージをしてくれたり、ごはんを作ってくれたり、楽しい話をしてくれたり、ゆっくり休めるように準備してくれたり。
イヤな顔一つせず、できることは何でもしてくれる“君”がくれたものは「無償の愛」でした。

“君”の愛は“僕”のスイッチとなり、徐々に本来の自分を取り戻します。
“僕”は“君”に苦労をかけて、迷惑をかけたと思っているのに、“君”は得意げになって鼻歌を歌っていました。
そんな“君”のことをを頼もしく感じ、出会えてよかった。
そしてこの先の人生を共にして、二人で真実の愛に辿り着きたいと願うのでした。

テーマは「生」(=「愛」)で、「大好物」と似ているような気がします。
この曲を初めて聴いた瞬間、
「なんて優しい歌なんだろう…」
「なんでこんなに心が弱ってる人に寄り添った歌詞が書けるんだろう…」
と感動し、涙があふれ出しました。

そんな優しいスピッツですが、なんと!
2022年1月にWOWOWの特別番組として放送され、2023年6月には劇場版として全国の映画館で公開された
「優しいスピッツ a secret session in Obihiro」
のBlu-ray&DVDが2024年6月19日(水)に発売されます。
UNIVERSAL MUSIC STORE限定の完全予約販売で、一般販売はありません。
予約注文は2024年4月25日(木)までですので、お忘れなく!
https://spitz-web.com/yasashiispitz/

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