見出し画像

スピッツ歌詞考察(第64回)花と虫


【基本情報】

花と虫
作詞:草野正宗 作曲:草野正宗 編曲:スピッツ&亀田誠治
3分49秒

<リリース日>
2019年10月9日(16thオリジナルアルバム「見っけ」)

<収録アルバム>
見っけ(2019年10月9日リリース、16thオリジナルアルバム)

【MUSIC VIDEO】

【歌詞】

おとなしい花咲く セピア色のジャングルで
いつもの羽広げて飛ぶのも 飽き飽きしてたんだ
北へ吹く風に 身体を委ねてたら
痛くても気持ちのいい世界が その先には広がっていた

終わりのない青さが 僕を小さくしていく
罪で濡れた瞳や 隠していた傷さえも
新しい朝に怯えた

それは夢じゃなく めくるめく時を食べて
いつしか大切な花のことまで 忘れてしまったんだ
巷の噂じゃ 生まれ故郷のジャングルは
冷えた砂漠に呑まれそうだってさ かすかに心揺れるけど

終わりのない青さの 誘惑に抗えずに
止まらなかった歩みで 砂利の音にこごえて
新しい朝にまみれた

「花はどうしてる?」つぶやいて噛みしめる
幼い日の記憶を払いのけて

終わりのない青さは 終わりがある青さで
気づかないフリしながら 後ろは振り返らずに

終わりのない青さが 僕を小さくしていく
罪で濡れた瞳や 隠していた傷さえも
新しい朝に怯えた
爽やかな 新しい朝にまみれた

花と虫(作詞:草野正宗)

【考察】

おとなしい花咲く セピア色のジャングルで
いつもの羽広げて飛ぶのも 飽き飽きしてたんだ
清爽な恋人が住む街での暮らしは、いつも変化がなく退屈で、飽き飽きしているところだった。

北へ吹く風に 身体を委ねてたら
痛くても気持ちのいい世界が その先には広がっていた

心の赴くままに上京してみると、刺激的な世界が広がっていた。

終わりのない青さが 僕を小さくしていく
罪で濡れた瞳や 隠していた傷さえも
新しい朝に怯えた
しかし、大都会での暮らしは、自分らしさを見失ってしまう。
まるで青い大空の中で見えなくなったちっぽけな“虫”のように。
自分の気持ちに嘘をつき、罪悪感から涙することもあった。
心に負った傷さえも隠しつつ、気丈に振舞わなければならず、新しい朝の訪れが怖くなった。

それは夢じゃなく めくるめく時を食べて
いつしか大切な花のことまで 忘れてしまったんだ
それは夢の話じゃなく現実で、めくるめく過ぎていく時の中で大切だったはずの恋人のことも忘れてしまっていた。

巷の噂じゃ 生まれ故郷のジャングルは
冷えた砂漠に呑まれそうだってさ かすかに心揺れるけど
風の噂で聞いた話によると、生まれ故郷の街は過疎化が進み、寂しくなっているらしい。
そう聞くと、少し心が揺れるけど…

終わりのない青さの 誘惑に抗えずに
止まらなかった歩みで 砂利の音にこごえて
新しい朝にまみれた
大都会の誘惑に負けて、引き返すことができなかった。
毎日砂利の音を耳にするだけでどうすることもできず、新しい朝を迎えるしかなかった。

「花はどうしてる?」つぶやいて噛みしめる
幼い日の記憶を払いのけて
「恋人は今頃どうしてるかな?」
つぶやいて噛みしめる。
幼かった頃の記憶を払いのけて、今の姿に思いを馳せる。

終わりのない青さは 終わりがある青さで
気づかないフリしながら 後ろは振り返らずに
大都会での暮らしには、実は限界を感じていた。
でも後ろを振り返るのが怖くて、気づかないフリをしていた。

終わりのない青さが 僕を小さくしていく
罪で濡れた瞳や 隠していた傷さえも
新しい朝に怯えた
爽やかな 新しい朝にまみれた
大都会での暮らしは、自分らしさを見失ってしまう。
まるで青い大空の中で見えなくなったちっぽけな“虫”のように。
自分の気持ちに嘘をつき、罪悪感から涙することもあった。
心に負った傷さえも隠しつつ、気丈に振舞わなければならず、新しい朝の訪れが怖くなった。
本来なら爽やかなはずの新しい朝を迎えるしかなかった。

登場人物は“僕”と、“僕”の生まれ故郷で暮らす“恋人”ですが、この曲のタイトルでもあるように、それぞれ“恋人”を“花”、“僕”を“虫”に喩えています。
主人公の“僕”は、飽き飽きしていた生まれ故郷を飛び出して上京しますが、大都会で埋もれて行く自分に限界を感じています。
青い大空が広がれば広がるほど、そこを飛ぶ“虫”が小さく見えてしまうのと同じような状況であると感じています。
そして忘れていた“恋人”の存在を思い出し、“花”を求めてさまよう様も、まるで“虫”でした。
テーマとしては、「生」になるでしょう。

「北へ吹く風に身体を委ねてたら」とあるので、南から北へと向かっていることがわかります。
福岡から上京した当時の経験が歌詞に込められているのかもしれません。

(第63回)ジュテーム?←PREV|NEXT→(第65回)i-O(修理のうた)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?