喧嘩腰な大阪弁 #旅する日本語

 私の祖父母はどちらも大阪出身だ。「河内」と名の付く地域。話す言葉は河内弁。

「お前はなにしてんねん!あほけ!」
「知らんがな!」

 そんな喧嘩腰に聞こえる会話が彼らの常であった。
 ところが祖父は祖母が大好きなのだ。祖母がどこかへでかけると、花に水を遣るふりをしながら玄関先で待っている、それくらい好きなのだ。
 
「結婚してええことなんか、ひとっつもなかったわ」
 そう私に断言した祖母には習慣がある。

 毎朝夜も明けきらぬうちから散歩に出ること。畑を抜け、河川敷を歩き、祖父の眠るお墓に参る。毎日毎日、夏も冬も。

「どこへ行くのも一緒やったからな」
 そう言って遺影を自分に向けて抱き締め、リムジンに乗った祖母。
 彼らにとっては口喧嘩も、睦ぶひとつの形だったのだろう。
 寂しがりで口下手な祖父は、今日も祖母を待っている。そして祖母はきっと、それを先刻御承知なのだ。

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