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世界の終わりを見たい男 |ショートショート

 男には夢がある。

「はーあ」
 大きく息を吐きだすと、隣に寝ころんだヒロが顔を上げた。
「まーた、溜息なんてついて」
 男は答えずに、手元にあるスクラップブックを眺めた。宇宙。闇が大半を占める空間。光すら闇から生まれる世界。

 男には、諦めきれない夢がある。

 ヒロは眠っている。男はその姿をじっと見つめていた。もうずいぶん長い間一緒にいるヒロ。この存在がなくなったとき、どう感じるのだろう? 考えても考えても、男の脳は答えを導き出せなかった。
 まだこの地球は、人類が生きられる環境であり続けるらしい。

 男には、どうしても叶えたい夢がある。

 ヒロは笑っている。男が何をしたわけでもないのに、それでも笑っている。男と一緒にいるのが楽しいと言う。
 ヒロはきっと、男が何をしても許してくれる。

 男には、全うしたい夢がある。

 ヒロは泣いた。泣いて微笑んで、それで終わりだった。男はなにも感じなかった。これでは、見たい景色を見られない。
 この広くて狭い世界は、まだ続くらしい。

 男は、夢を見続けることにした。

「はーあ」
 大きく息を吐きだすと、隣に寝ころんだルイが顔を上げた。
「まーた、溜息なんてついて」
 男は答えずに、手元にあるスクラップブックを眺めた。宇宙。闇が大半を占める空間。光すら闇から生まれる世界。

 男は、夢を追い求めることにした。

 世界はまだ、終わらないようだ。

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