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35年前の『男女七人夏物語』から女性の仕事とパートナーシップについて考えてる

オリンピックのため、毎週観ていたドラマがお休みになっていた。何気なくTverを眺めていたら『男女七人夏物語』があった。86年の「トレンディ・ドラマ」の先駆け的存在の作品である。
何の気なしに観始めたら、ハマって、続き見たさに全話配信のあるParaviに登録までして最終話まで一気観してしまった。

ここからはネタバレを含む感想メモなので、ぜひ全話観てからお読みください。(Wikipediaにはあらすじが全て載っています)

最初こそ、キャーキャーする女たち、合コンのシーンの互いの値踏みや、いじめ的ないじりなどに抵抗を感じながら見ていたものの、大竹しのぶ演じる桃子と明石家さんま演じる良介の生き生きとしたかけあいが本当に魅力的で、引き込まれた。

びっくりするけど、生活に携帯電話がない。
今や携帯電話がないことは考えられないが、35年前は誰も持っていなかった。主人公たちは家の電話にかけ、会社にも私用電話をかけまくり、そのどちらかにいなければ直接家に行ってピンポンする。留守番電話が流通し始めた頃。

そんな状況で、転勤が決まれば「行かないで」と言いたくなるかもしれないし、海外へ半年も取材に出掛けるとなれば「絶対離れちゃだめ」と言いたくなるだろう。

4人の女友達は仲が良くて、恋愛でゴタゴタするのに友情が壊れない。付き合ってみたものの「やっぱり違う」に気づけば別れて「そういうもんだよね」と受け入れ合っている。過去のお互いの恋愛相関エピソードも、笑い話として語られる。(このへん、83年の群像劇『ふぞろいの林檎たち』の湿度とはだいぶ違う)
しっかり者でバリキャリで美人だが、愛情関係には不器用な千明(池上季実子が好演)は、うっかり者で愛嬌があって憎めない桃子(大竹しのぶ)に、「あんたには【普通のお嫁さん】が合ってる。ライターなんて向いてない。好きな人とは離れちゃダメ」っていう呪いをかけようとする。
この境界線を踏み越える感じに「あるある、親友の、善意の呪いだ」と、辟易しかけたが、千明は必死なのである。桃子がアイデンティティの一部になりかかっている。その桃子に幸せになってもらわなくちゃ。私の好きな良介さんにも幸せにいてほしい。二人はお似合いなんだから。本気でそう思っている。
桃子は千明ほど友人と一体化していないので「【普通の】っていうのはないんだよ」と言い返すことだけをして、千明を責めない。
私なら「うっさいなー、あんたが普通の結婚したいからって私に押し付けないでよ。したいなら自分でやんなよ」とでも言いたいところだけど。桃子のマイペースさ、はねのけなくても、境界を侵食されないんだな。強い。

そして、桃子は「キッパリと決意」するのでもなく、最後までず~っと葛藤しながらも自分が惹かれる道へと進んでいく。その後ろ姿が爽やかだ。非常に観終えた後味が良かった。

その後二人がどうなったかは、翌年放映の『男女7人秋物語』で描かれている。(Wikipediaであらすじだけ読んだ)

35年後の今ならどうだろう。2021年のドラマ『リコカツ』でも、海外での仕事のチャンスに揺れる主人公(北川景子)が登場する。オンライン通話もできる現在だが、それでも主人公は悩み、夫(永山瑛太がめちゃめちゃ好演。ぜひ観てほしい)が天職ともいえる仕事を手放そうとすらする。『リコカツ』には、親世代のパートナーシップも描かれていて興味深い。夫から離れて生き生きと中居の仕事をする、瑛太の母役を宮崎美子が演じている。その時の父はどうしたか。

しかしこんなにドラマの主人公たちは離れて暮らすことを恐れるのに、単身赴任という形は、なんだか市民権がある。どういうことなんだろう。私自身は遠距離恋愛の経験がないので、実感がわかないけれど、例えばいま海外に半年行く機会があったら喜んで行くと思う。夫は寂しがるだろうけど、応援してくれるように思う。(例え反対されても、私は行くと思う)

仕事と恋、その先のパートナーシップ。結婚、離婚、子育て後のパートナーシップ。フィクションであってもその時代を生きる人たちの姿がドラマに現れるし、またドラマからも私たちは影響を受ける。
せっかくリリースされているこうした作品をもとに、自分なりの仕事観・恋愛観・結婚観などを検証したり、違う価値観の人と話し合う機会が持てるといいなあと思う。



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