LINE運用3.0、どうやって実現する?
皆さんこんにちは。株式会社オプトの宮﨑大央(だいお)です。
前回記事では、「LINE×データ」のお話として、「LINE運用3.0」(=LTVなどを指標にしたCX*最適化を目指すLINE運用)について執筆させていただきました。
記事公開後、何名かの方からこの考え方について、「それ自体は分かるけど、どうやって始めたらいいの?」という質問をいただきました。
その為、今回の記事では LINE 運用 3.0 の実践に向けたハードルやその乗り越え方などを 説明していきたいと思います。
そして、ユーザーにとってより便利で心地のいい LINE 公式アカウントのコミュニケーションと、企業様にとってより費用対効果の高い LINE 公式 アカウント活用法が浸透していくきっかけを、少しでも多くつくることができればと思っ ています。
(語注*:CX とは、Customer Experience、ある商品・サービスを通じて顧客が感じた経 験や価値を指す)
1.おさらい:LINE運用3.0とは?
まず、前回説明した「LINE運用3.0」について少し振り返りたいと思います。
前回の記事で、今までの「LINE 運用 1.0」のマスマーケティング的な運用や「LINE 運用 2.0」 のダイレクトマーケティング的な運用を脱した「積み立て式のコミュニケーション設計」 を、LINE運用 3.0 と定義して紹介しました。
参照:https://webtan.impress.co.jp/e/2020/06/29/36495
この LINE 運用 3.0 は、現在のLINE公式アカウントの活用方法としては理想的だと考えていますが、日々広告主様にご提案を進めていく中でも、なかなかこういった運用が広 まっていない現状があります。
まだまだLINE公式アカウントの運用は、かけたコストを直接 CV*の売上でペイしようという考え方が一般的だと感じています。
(語注*:直接 CV とは、広告媒体経由で Web サイトに来訪し、サイトを離脱することな く同セッション内でコンバージョンに至る事、またはその件数を指す)
2.LINE運用3.0の導入時の障壁
なぜ、このLINE運用3.0は簡単に受け入れられないのでしょうか。
その理由は様々あると考えていますが、企業様にご提案をしていく中でぶつかる事の多い導入障壁、担当者様からのコメントはこのようなものです。
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「実践した先が見えない。投資対効果がわからない。」「他社事例が少ない。」
現在運用している運用戦略に則って運用した場合には算出が可能な「手堅い予測売上」を ゼロベースにして新しい運用戦略に移行するにもかかわらず、精度の高い売上予測シミュ レーションが立てられない。リスクを取ることができず、実践を見送る。※CX最適化のための LINE運用を実現している企業の事例数が少ないがゆえにシミュレーションが難しい背景がある。
「実行イメージが湧かない。」
実践してみた際の日々の運用体制や業務フローがイメージできずに、社内リソースが増えてしまうのではないか、実現が難しいのではないかと考え、実践を見送る。
「LINEだけ改善してもしょうがない、マーケティング戦略全体をテコ入れする必要があるが、現時点でそこまでのリソースがかけられない。」
CX改善をするためには、すべてのチャネルでのコミュニケーションを一度見直して設計しなおさなくてはならない。LINEだけ先んじて取り組んだとて、二度手間になってしまう恐れがあるのではないかと考え、実践を見送る。
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このような「できない理由」がいくらでもあって、ロジカルに考えると正しそうなこのLINE運用3.0の考え方も、手放しに「やってみよう」と判断できるほど簡単には受け入れられていないのが現状です。
これらを踏まえた上でも、LINE運用3.0はリスクを取ってでも実践に乗り出すべき運用戦略だと考えています。
その理由を説明します。
まずその背景としてそもそも知っていただきたい事としては、この2点です。
① CX最適化はLINE上のコミュニケーション改善だけではできない
② LINEが企業のCXデザインにおける重要チャネルである事は間違いない
CX を最適化するためには本来、EX*と CX どちらも最適化していく必要があると考え ています。(※EX改善に関する詳細は割愛します)
そして、このEX/CXの最適化のためには、LINE での施策を改善するだけではどうにもならないことは事実です。
ただし、全体のCXデザインを考えていく中で、まず影響度の大きい、もしくは全体を小さい箱に閉じ込めてミニマムテストができるLINEから既成事実を作ってみるというのもありなのではないか、と考えています。
どういう事か次の章で説明します。
(語注*:EXとは、Employee Experience、従業員体験や従業員体験価値の向上を目指す考え方等を指す)
3.今のところ見えているベストなLINE運用3.0への移行方法
いきなり全顧客に全チャネルでのコミュニケーション方法をデザインしなおすとういうのは、非常にハードルが高いです。
そんな中でも世界的なマーケティングの潮流・顧客中心の考え方に移り変わりつつある市場感を踏まえても、CXを最適化するため取り組みは実行すべきだと考えられます。
だからこそLINE社も、やみくもにユーザーへのメッセージ配信回数を上げてしまうような以前の価格体系を脱し、現在の価格体系に移行をしたという背景もあるのかと考えています。
少しでも導入ハードルを下げて、実践に踏み切っていただくために、現時点である程度見えている方法を紹介していきたいと思います。
LINEという媒体は、国内のプラットフォームとしては唯一といってもいい特異な性質を持っています。
それは、広いファネルに対して、一意のUID*に紐づけてユーザー行動が捕捉可能である事です。
さらに、LINEは企業によっては数千万人の友だちを有する程、接点を持てる人数規模が大きいプラットフォームでもあります。
このプラットフォームを活用して、まずLINEの中だけでCX最適化のためのCRM施策を実施してみて、そこから成功体験を得て、全顧客×全チャネルでのCX最適化のためのコミュニケーションデザインのテコ入れを行っていくのがよいのではないか、と考えています。
CX最適化を狙ったコミュニケーション改善が長期的にLTVを向上させるという事をまずミニマムにLINEというチャネルの中だけで証明し、その事例をもとに全チャネルのテコ入れに踏み出すといったイメージです。
(語注*:UIDとは、LINE社がユーザーに対して一意に割り振った識別子)
とはいえ、「LINEの中からテストしよう」というのも、いきなり数百万人規模で「直接CVによる売上を狙わない配信」を行っていくのは、リスキーです。
その為、LINE公式アカウントの中でもテスト用のUIDグループをつくって、そのUID群だけにCRMの戦略に則ったコミュニケーションをテストしてみるというのがよいのではないかと考えています。
*語注:OAとは、LINE Official Account=LINE公式アカウントを指す通称
LINE は、UIDで顧客を一意に認識することができる為、上記のように UID をテストグループとコントロールグループ(あえて CRM を実行せず、現状運用のままコミュニケーションするグループ)に分けて運用していく事が可能です。
さらに、テストグループの母数も 十~数十万人程度の規模を集める事もできる為、十分なテスト結果が得られます。
あいにく、このような形式で LINE運用3.0に乗り出した企業様はまだご支援出来ていないのですが、今後のマーケティングの潮流がCX改善の方向性に向かう中で、確実にトレンドになってくる運用戦略ではないかと考えています。
このような施策効果への不安が実践ハードルになるパターンへの対策は、今回ご紹介し たようなスキームを組むことで回避が可能です。
それ以外の面でのハードルとしては、実行 環境の整備がハードルになりえますが、その部分は、我々オプトのUID 統合分析サービスのような、外部パートナーをうまく使っていただきながら乗り越えていただくのもよいのではないかと考えています。
これからもオプトLINE 戦略部としては、LINE 運用 3.0の導入・運用をご支援できるようにサービス開発・ソリューション開発とそれらのさらなる改善に努めていきたいと考え ています。