#24 遠い星で、また会おう。
※この作品は、フィクションです。
救急隊員が到着した。体の大きな男性2人。
「何があったんですか?」
「死のうとしたみたいで、手首切って、風呂場で、血を流していて。」
「とりあえず、救急車まで運びますね。息子さんですか?」
「そうです!」
「高校生?」
「はい!」
「お父さんは?」
「いません。母子家庭です。」
「わかりました。とりあえず、息子さん、一緒に来てくれる?」
「はい。」
とりあえず、部屋に行った。浩介が、怯えている。
「さっきは、ごめんな。」
「なにがあったの?意味が分からないんだけど。」
「母さんが、手首切って倒れてた。」
「ええ!?」
「とりあえず、俺はついていく。浩介は、もう寝て、明日普通通り学校に行けよ。」
「いや、無理でしょ!こんなわけ分からない状態で、俺を一人にするわけ?!」
「いいから。」
「いいから、じゃないでしょ!」
「うるさい!言うこと、聞け!」
浩介が、ビクッと体を強張らせる。
「ごめん、細かい説明は後。とりあえず、母さんを病院に連れて行って、帰ってくるから。頼む。言うこと、聞いて。」
浩介は、怯えたように頷いた。救急隊員が「弟さん、一緒でもいいけど。」と言ったけど、断った。こうして、生れてはじめて、救急車に乗った。
救急車の中で、母さんはぐったりしている。小さい声で「ごめんね、ごめんね…。」とつぶやいている。ごめんじゃねえよ。
救急隊員が、どこかしらと連絡を取っている。母さんの状況を見て、何かのタグみたいなものに「軽症」と書いていた。どこどこの受け入れできますか、みたいな話をしている。母さん、これ、軽症なのか。窮屈な社内で、ぎしぎしとベッドが揺れる音がする。サイレンが街に鳴り響いている。外は、真っ暗で、どこに向かっているのかも分からない。母さんの腕に、包帯が手際よく巻かれる。作業の合間から見える傷は生々しかった。
そうこうしているうちに、病院に到着した。母さんが運ばれて行く。それについていく。「息子さんは、ここで待っていてください。」と、病院の待合室に連れて行かれた。誰もいない病院、待合室だけに電気が点いていて、受付も奥の廊下も真っ暗だ。母さんは、死ぬのか?軽症と書いてあったから、死なないんだろうか?時計は2時を指している。
寝る時間、あるかなぁ。
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この物語は、著者の半生を脚色したものです。
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