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【読書感想文】 哲学と宗教全史


文字通り、古代から現代に至るまでの哲学と宗教の歴史が説明されています。「人はいかに生きるべきか」という問から哲学は発生していますし、宗教もその側面があります。哲学と宗教の両者を並行して歴史を振り返るというのも意味のある検証ですね。

古代の哲学・宗教

古代において、哲学と宗教は「神・造物者、または超越者」を立てて人生を論ずるか、あるいは悟性のみで思想するかによって分かれていたと思います。悟性のみといっても、近代の科学のような立証主義ではなく、多分に妄想や思い込みから始まるのですが。。(四大元素論など)

西洋世界ではなんといってもギリシャから哲学の系譜が始まり、東洋では中国の春秋・戦国時代に諸子百家が活躍したころから哲学の歴史が始まりました。中国において、春秋・戦国時代が、その後代よりも思想が発展したともいえますが。。

宗教はゾロアスター教からセム族の一神教(ユダヤ教→キリスト教、中世においてイスラム教)、インドでは仏教が生まれました。御存知の通り仏教はインドでは永らえず、現代で仏教が盛んな地域は東南アジア(マレーやインドネシア除く)、日本です。中国や朝鮮は儒教文化がむしろ強いです。

中世

良くも悪くも宗教が世の中に影響力を行使した時代でした。大きな流れはなんといってもイスラム教の勃興でしょう。

イスラム教といえば偶像崇拝禁止、ムハンマドは最後にして最大の預言者、だが普通の人(キリスト教がイエス・キリストが備えていると考える神性を認めない)だと考えます

ジハードのイメージが強いですが、強制して入信することは好みません。中世においてはイスラム共同体において、一神教を信じる他の宗教の信者は「啓典の民」とよばれ、人頭税を取り立てるためにはむしろイスラム教に改宗してほしくなかったのです。

とはいえ一神教を信じない人々(多くの日本人)は、少なくとも当時のムスリムの感覚からすれば討伐の対象になってしまいますね。

キリスト教によって追いやられたギリシャ哲学の学者・書籍が東方世界(最初ササン朝ペルシャ、中世になりアッバース朝などイスラム世界)に流れ込み、また唐との戦い(タラス河畔の戦い)で製紙法を得たことにも後押しされ、多くのギリシャ古典がアラビア語に翻訳されました。ここの流れで、著名なアラブ人哲学者イブン/シーナー、イブン・ルシュドが誕生したと考えられます。

ルネサンス以降、近代

キリスト教の宗教改革によりキリスト教世界はカトリックとプロテスタント(それ以前より東方正教会がありますが。。)に分かれることとなります。プロテスタントの中でもカルヴァン派の予定説「与えられた天職を禁欲的に務めることが神の意にかなう」から、資本主義の原型が生み出されたと考えられます。一方プロテスタントに批判されたカトリック(ローマ教会)も、ヨーロッパでの勢力こそ衰えましたが、大航海時代とともにヨーロッパ世界の外へ活動を広げていきました。中南米、フィリピンがキリスト教徒が多いのもこのことの結果となります。

哲学の世界において、イングランドではベーコンの経験論から自由民主主義の元となったジョン・ロック、大陸合理論の流れではデカルト「我思う故に我あり」 からスピノザ、ライプニッツと続いていきます。この流れは理性を重視し、正しい命題(問)から、正しい論理によって次の命題をみつけていく演繹法を重視しました。

現代

現代ではいくつかの哲学の流れがあり、その動きもあるのですがどれだけ多くの人に影響を与えているのか疑問です。宗教に至っては、既存の宗教は生活に根ざしていても、これから大きな変革や展開を迎えるのでしょうか。

一方、哲学や宗教に主体的に関係する人が少なくなった現代ですが、果たして人は人生や神について考えを深めなくてよいのでしょうか。技術だけが急速に進歩し、それに伴い新しい哲学や宗教の姿が生み出されていくことを期待しています。

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