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幸せのメカニズム 実践幸福学

元エンジニア、現在はウェルビーイングを研究していらっしゃる前野隆司氏の著書です。科学技術の進歩とそれに基づく豊かさの向上こそが人を幸せインすると信じてエンジニアになったのに、豊かさが向上しても幸せ感があがっていないことに気が付かれたのが、ウェルビーイング研究のきっかけでいらっしゃいます。

すべての仕事は幸せにつなげられるはず、といった考え方、経済最優先の考え方の行き詰まり、など共感できるところもありましたが、首をかしげざるをえないところも多くありました。

幸せのループという考え方が紹介されていましたが、そんなループに乗る以前、食うや食わずやといった状況下にある人たちが果たしてそんなのんきな幸せのループなど考えられるのか。戦禍にある人たちは明日生きていくことで精いっぱいのはずである。それでも幸せたりえるのか。

大学の先生なので、調査も実践していて、幸福感と行動の因果関係も示していますが、ほんと?と首をかしげたくなるような結果もありました。たとえばアートや音楽鑑賞をしているだけの人と幸福の相関はなく、アートを想像している側に幸福との相関があるなど。見てるだけ、聞いてるだけでは幸福にならない、ってうーん。そもそも芸術にふれることってそんな単純なことなんだろうか。芸術を通して心が震える、内省することで、刺激を受け、思考が広がり、それがなにかの行動変化にあらわれていくというのがアートの意味合いだと私は思うんですよね。そもそも幸福感を測定ってできるんだろうか・・。

学問として学ぶ以上は、個人の感想ですませるわけにはいかず、定量調査の裏付けはいるでしょうが、裏付けをしようとするがあまり、きっぱり測定しきれないものにまで、白黒をつけ、多様化を主張していたはずの主張が、きめつけになっているところがありやしないか、というのが私のこの本を読んだ感想でした。

いいテーマ、だけどなんだか、ん???という思いが消えないそんな本でした。


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