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デザイナーのタカヤ・オオタさんと共創したLUUPの新ロゴ。完成までの道のりを全公開!

2月15日(火)に、電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」のロゴがリニューアル。併せて、このロゴが刻まれた新電動キックボードを発表しました。“街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる”というLuupのミッションを、どのようにデザインへ落とし込んだのか?

完成したロゴに込められた想いや制作の裏側を深掘りするため、ご担当いただいたデザイン事務所kernのタカヤ・オオタさんにインタビューを実施しました。


タカヤ・オオタ
デザイン事務所と事業会社でデザイナーを務めたのち、2017年にkern (ケルン) を設立。スタートアップ企業を中心にアイデンティティデザインの領域で活動中。2019年からはチーズケーキブランド「Mr. CHEESECAKE」のアートディレクターを兼任。その他の仕事として、「青山ブックセンター」CI、『明け方の若者たち』(カツセマサヒコ著) 装丁、「10X」CIなどがある。立教大学経営学部卒業。
https://kern.inc/
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1年前にお声がけ。ロゴデザインを担当いただくことになった経緯とは?

ー早速ですが、今回LUUPがロゴをリニューアルするにあたり、タカヤさんにデザインをお願いすることになった経緯を教えていただけますか?

2021年の初頭に、Luup代表の岡井さんから相談したいとお声掛けがありました。ただ、その当時は未確定な要素もあったので、もう少しその辺りが見えてから本格的に動き出しましょうという話をしました。その後話がまとまってきて、Luupの“街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる”というミッションを反映したロゴを制作してほしいというご依頼があり、6月〜7月ぐらいから開始したというのがざっくりとした経緯です。データを遡ると、初回の提案が2021年7月ですね。

ーなるほど。1年も前からお話させていただいていたんですね。

そうですね。お待たせするのも申し訳ないので、岡井さんには無理せず、他にいいデザイナーがいたら声をかけてねと伝えていたのですが(笑)有り難くも待っていただいて。待ってくださったからにはちゃんと気合いを入れて作ろうと決めました。

ハードウェアのロゴ刷新はソフトウェアのように簡単にアップデートができないですし、街じゅうを走る機体となるとぱっと見た瞬間の印象が非常に大事になります。こちらも入念にリサーチや要件定義を行いながら準備をしていました。

ーありがとうございます。そこから実際に新しいロゴの制作を開始するにあたって、初回の打ち合わせはどのようなお話から始まったのでしょうか?

一般的にデザインを作る時って事前に質問表を用意していくことが多いんですが、僕の場合は雑談のような会話を通して、その中からキーワードをすくい上げるスタイルを取ることがあります。

今回も岡井さんと「1年後のLuupはどうなっているだろう?5年後、10年後は?」というような漠然とした題材から、盛り上がった部分を徐々に深掘りしていくような形でしたね。

ー最初は雑談をしながら、ロゴ制作の参考にできそうなトピックを探した形なんですね。

そうですね。これまでのLUUPって、新しいものが好きな人やその周囲に口コミで波及する人々が、まずはユーザーになっていくスタートだったと思うんです。それが企業や自治体と連携して、利用できるエリアが徐々に広くなり、LUUPを目にする人の母数が増えてきた。

では、事業の拡大に伴ってアップデートされる新たなLUUP像はどんな感じなんだろう?と。例えば、都心から離れた地方在住の人に「LUUPはすごく先進的な乗り物だよ」と言って伝わるんだろうかとか、自分の親世代の方々はどんなデザインだったらより安心して乗ってくれるんだろうとか。

「インフラをつくる」ことを標ぼうする企業と事業の顔として、そして色々な街に存在する顔として、さらに幅を広げた時のLUUPのあるべき姿をプロジェクトに携わるみなさんと導き出していきました。

新しい乗り物や移動手段としての「先進性」と、社会や人々に親しまれる「安心感」のバランス

ー今回ロゴを刷新するにあたって、LUUPブランドをどのように表現していこうと考えられましたか?

Luupには、“街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる”というミッションがあります。元々頂いたご依頼にも、それを実現するためには、新しい乗り物や移動手段としての「先進性」と、それをよりいろんな人に乗っていただくという意味での「インフラ感」や「安心感」の両立が必要だというお話があり、自分自身もそう感じました。

そこで、新しいものだけど社会や人々の生活に馴染み、親しまれる雰囲気を内包することを最重要視しました。

ー初回の提案の際も、その2点をベースにして作っていったのでしょうか。

そうですね。この軸は抑えつつ、その中でもう少し先進性を感じる雰囲気のものや、安心感に寄せた雰囲気など、バランスに幅を出したトーンでいくつかプロトタイプを作りました。

ーLuup社内でも、タカヤさんはちょうど良いバランスを取ってくれたという話が出ていました。

ミッションの延長線上を想像してみて、これからLUUPがインフラ的な存在になっていくとなると、すごく尖ったデザインというのは定着しないと思うんです。でもやっぱり、新しい時代の乗り物、新しいサービスとしての雰囲気をまとわせたいなと感じていたので、皆さんもそのように感じてくださっていたら嬉しいですね。

ーそういった過程を経て今回のロゴに行き着いた。コンセプトを教えていただけますか?

プレゼンテーションで自分から提案したのが「expand you」というコンセプトでした。例えば渋谷という街は思ったより広くて、端から端まで歩いて行くのは大変です。たとえ知っている街でも、知らないところはまだたくさんある。

そんな時に、LUUPのような移動手段があると、「1つ隣の小道を通ってみようかな」って思えたんです。それで新しいカフェやお店を見つけることが新鮮に捉えられたり。自分の行動範囲やできることが広がっていく体験の楽しさというのが、LUUPの1番の魅力だと感じていました。「expand you」、“あなたが広がる”という言葉にはそういう意味が込められています。

ーなるほど。

それがロゴデザインとどう連動するかというと、「you」とアルファベットの「U」の読みが一緒なんです。「expand you」というコンセプトは身体が街に広がっていくようなイメージなので、その関係性をロゴの中でも展開できないかな?と考えました。

そこで、「U」というアルファベットをロゴ全体、全ての文字に拡張できないかなと考えて作ったのが、最終的にLuupさんに共感いただき、採択されたデザインになります。

ー詳細を聞くと、納得感が生まれますね。ロゴは、交通工学の分野で用いられる「緩和曲線」からも着想を得たと聞いています。具体的にどのようなものなのでしょうか?

Luupのミッションである、“街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる”を具現化する手段として、クロソイド曲線という緩和曲線の一種から着想を得ました。

高速道路や鉄道線路の設計で使われるものなのですが、直線からカーブを描く時って、直線と円曲線という二つを用いるんです。ただ、その二つだけだと、曲線が一気に曲がるような形状になっちゃうんです。そこに対して、直線と円曲線の間になだらかなカーブを入れることで、滑らかなターンが生まれます。

例えば、急な曲がり角っていっきにハンドルを切らないといけないので腕にも身体にも負担がかかるじゃないですか。それが、緩和曲線を取り入れた曲がり道だと、負荷を和らげながらゆるやかに曲がることができます。そうした道路設計の知恵を参考にしてシルエットを成形しました。

緩和曲線(クロソイド曲線)のイメージ

ー今回、それをロゴデザインに採用した理由を教えてください。

LUUPは利用者の人が運転をするサービスです。運転と道路のカーブには密接な関係があるので「U」の形に取り入れることにしました。直線と曲線だけで描いてしまうと“丸いのに鋭い”印象になりますが、なだらかなカーブを入れることによって「U」のシルエットにも柔らかさが生まれて、よりインフラとしての安心感というものを得られないかという試みでした。

ブランドカラー「LUUP GREEN」へのこだわり

ー今回制作したロゴには、プライマリーロゴとセカンダリーロゴの2種類が存在します。セカンダリーロゴには枠線がありますが、その意図について教えてください。

※プライマリーは「第一の、優先順位の高い」、セカンダリーは「第二の、補助的な」という意味。

(左)プライマリーロゴ (右)セカンダリーロゴ

LUUPのようにロゴが機体や屋外で用いられる場合、コンクリートや樹脂など素材との兼ね合いで、ブランドカラーの「LUUP GREEN」を使えないような状況があることをチームが認識していました。

その課題の解決策として、今回は2種類のロゴを用意することにしました。基本的には枠なしの (プライマリー) ロゴを用いて、そのクリエイティブ上でLUUP GREENを用いる。それが難しいときは、枠つきの (セカンダリー) ロゴを用いてロゴ内でブランドカラーも伝達する。

様々な使用環境が想定されるため、汎用性と耐久性を考慮したミニマムなロゴをプライマリー、よりブランド情報を付与したロゴをセカンダリーとすることを、僕よりも実利用のイメージを強く持っているインハウスチームの皆さんと一緒に決めました。

ーセカンダリーロゴの枠線は、どういったものをイメージされたのでしょうか?

LUUPの機体が置かれるポートの線などから着想を得ました。ロゴタイプのシルエットは緩和曲線からヒントを得た話をしましたが、今回はあえてシンボルマークを作っていません。Luupはモビリティを作る会社ではなく、インフラをつくる会社なので、モビリティを連想させる車輪や乗り物のアイコンをロゴに取り入れるという考えはなかったんです。

そのため、装飾によって直接的に表現するのではなく、道路のカーブ、ポート、ナンバープレートなど、LUUPを取り巻くさまざまな要素と関連性を持たせながら形を構築することを意識しました。

最終的なロゴとしてはシンプルな形ですが、その背後を支えるものをLUUPという事業やユーザーさんに身近なものと結び付けることで、愛着が芽生えてくれるといいなと考えながら作りましたね。一目見て先進性と安全性を感じさせ、背景を知る機会があれば「そうなんだ!」ともっと好きになる、そういうロゴになってくれたら良いなと思っています。

ー今回、今までの機体やロゴにも使用されていた「LUUP GREEN」を採用した理由や想いがあれば教えていただきたいです。

LUUPがインフラとして広まっていく中で、新しさを感じさせたいという思惑はありつつ、これまでの機体の「LUUP GREEN」が印象に残ってる人は多いのではないかと思いました。世の中にサービスがどんどん広がっていくとはいえ、初期からLUUPを応援してくださった人たちの想いも大切にしたいなと。そこで、色は据え置きにしました。特段変える理由がないものを無理に変える必要はなく、ブランドの資産として引き継ぎましょうという話をチームの方々とさせていただきました。

ー緑色でLUUPを認識しているユーザーさんも多いのではないかという点は、私たちとしても感じるところです。

たぶん、いきなりピンク色になりますと言われても「なぜピンクなの?」となるんですよね。黄色にしますと言われても「なぜ黄色なんだろう?」と。理由があって変えた方が良いものは変えるべきだと思うんですが、必然性がなく色々なものを変えるのは、意味がないと思っています。利用者の方々に親しまれているものをそのまま残していこうと思いました。

ー最後に、「ユーザーの皆さまに親しまれるように」というお話がありました。新しくできたロゴは今後どのように使われてほしいですか?

難しい質問ですね(笑)最初はすごくプレッシャーを感じていたので、無事に世の中に出るんだという安堵感があります。日ごろ街を歩いててLUUPの機体を目にする機会が多いので、そこに自分たちが作ったロゴが刻まれているというだけで感無量です。デジタル上だけでなく現実空間、それこそ街じゅうにロゴが存在するというのはすごく嬉しいことだなと、とても楽しみにしています。

新しく発表した電動キックボード


ータカヤさん、ありがとうございました!




Luupは、今回のロゴリニューアルをきっかけにデザイン面でもさらに力を入れて事業を加速すべく、デザイナーを積極採用中です!私たちと一緒に、 街じゅうを「駅前化」するインフラをつくりませんか?


Meetyのカジュアル面談も受け付けています!ご興味をもってくださったデザイナーの方は、お気軽にご連絡ください。


その他の募集ポジションは、採用ページをご覧ください。


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