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懐かしい手

思い切って、会いに行ってきた。
これまでと違う場面で会ったら、どんな感じなんだろう。

久しぶりに会った君は、全然変わっていなかった。

落ち着く声のトーンも、しっかりと安定感のある触れ方も。
しっかりと前を向いて、前だけをみて進んでいる姿も。

あぁ…よかった。
あたらしい世界できっと頑張っているとはわかっていたけど、やっぱり少し心配だったんだ。

僕の身体は君のことを覚えていて、触られるところから緊張が溶けていく。懐かしい感覚。

心地いい君の声を聴きながら、大好きな人に撫でてもらう猫になった気分だった。

もうあの頃のようには戻れないけど、また会えたことが嬉しくて。お互いまだ生きてるし、会うことを許してくれるならどんな形でも会っておきたい。会いに行こう。

これは正しい選択だった。

あの頃が懐かしくて切なくて、もうあの時代が終わってしまったことに胸がきゅっとするけれど、それでも僕はやっぱりこれからも君に会いたい。触れて欲しい。

ちょっと不慣れでぎこちない二人だったけど、また会いにいくよって約束してきた。

あの懐かしい手に触れてもらいに。
君の落ち着く声を聴きながら。

そしてやっと僕も、次に進めそうだ。


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