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【逗子日記】 20230922

 海の家が綺麗さっぱりいなくなった。解体されていく様子を何度も見ていた。夜中の砂浜には積み上げられた木材がある。暗闇の重機の存在感には圧倒される。しかし、もうこれらの全ては残骸と、残骸を粉砕するための機械だ。波に流されて、浜にたどり着いた残骸が置いてけぼりにされていく。そうやって元通りになる。江ノ島もくっきり見える。元通りの生活だ。拒むこともできず、大量の酒と煙草と、人々の声が潮の香りに混じる。僕はブルーシートを引いて、ぼやけた空気から青空を見上げていた。眩しくて横になると、空き缶やペットボトルが見えたりもする。少しずつ消えていく。人々も、人々が吐き出した空気も、ゴミも、これまた全ての残骸は海で少しずつ消えていく。バカンスも悪くない。今年もよく賑わっていた。僕は一人だったが、開放感に孤独を感じることはなかった。それでも僕は冬の、あのあまりにも寂しい海が待ち遠しい。

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