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【掌編】清水橋

 清水橋を越えるとぴかぴかの立体駐車場がある。夏の日差しは田越川を静かに際立たせている。干潮に現れる岩に凛々しく立つ鳥、熱を上げた橋上で人はそれを見つめていた。私が見たその後ろ姿には虚しさが重たくのしかかっているようだった。電車に纏わる音や、人々の声は、昼間の方が幾らか穏やかな息づかいに思えるのだ。
 昔、この場所には交番があり、こぢんまりとしていた。駐車場は瓦礫にも見えるおんぼろの壁がその歴史を飾っていた。
 ある夜、橋に頭をうな垂れながら泣いている人がいた。
 私は、声くらいかけるべきだったのだろうかと思った。
 そんな時、サイレンがあっという間に私を追い抜き、救急車は県道の方へ曲がっていった。
 今でもまだ、あの駐車場の受付処では千羽鶴が私を出迎えてくれるのだ。


作:矢野南

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