見出し画像

【建築・インテリアを考える前に読むブログ】第5回 デザインクオリティを上げる術

建築やインテリアの仕事で「予算をいくらでも使っていいから好きなだけこだわって良いよ」という物件はまずありません。

予算には必ず限りがあります。

デザイナーはその限られた予算の中でどう要望を満たすものを作り上げるのか、
さらにはクライアントの想像を超えるものを提供できるかで
そのデザイナーとしての資質を問われているといえます。

どのように予算以上のデザインクオリティに仕上げるのかを今回はこちらの物件で説明いたします。


マッサージ整体院つぼみや

五感を癒すおもてなしをコンセプトに
身体のケアをしてくれるマッサージ整体院です。
エントランスドアをくぐった正面に華道家の矢田青幸氏による美しい作品でお客様をお出迎えいたします。

上記のコンセプトに併せて、
旅館のような雰囲気でダークカラーベースに仕上げて頂きたいとのご要望で、
おもてなしのイメージをはっきりとお持ちのクライアントでしたので、
非常にスムーズにデザインを考える事が出来ました。


照明でメリハリをつける

どの物件でもそうですが、いかに予算を抑えるかというのは建築・インテリアの世界の永遠のテーマです。
全ての素材を高級なもので取り揃えるというのは現実的ではありません。


ではどうするのか。




空間を全体的に明るく照らすとやはりどうしても一つ一つの素材感が露わになってしまいます。
ですので、まずは部屋の全体の照度を落とすことで素材の選択肢を増やすことにしました。

要望であったダークカラーベースという世界観を活かして全体は暗く落とし、
そこから見せたい素材だけが明るく見えるように照明を当てました。

例えば壁はほぼクロスで仕上げていますが、
照明を当てて陰影を作るとコントラストができ、雰囲気を作ることができます。

これは高級なホテルやレストランなどでもよく使われている手法であり、
本物件でもこの手法を採用しております。

また、間仕切り壁の下部、床と壁の極など、所々に間接照明を入れています。
この照明によって床と壁の際にラインが浮き上がり、暗く落とした空間の中でのフェイスライン、メリハリをつけています。


高級感を印象付けるのは「本物」


ただ、全てをこれらの手法で構成しても全体的なクオリティには限界があります。
つまり、"なんちゃって"感の余韻がどこかに残ってしまい、本物を知る人には見破られてしまいます。

そこで要所、鍵となるところに「本物」を取り入れています。

今回でいうと写真にある格子。


この格子は檜材を使用しています。

お客様が施術する部屋に向かうとき、
戻ってくる時に視界に流れるように入り込んでくるこの格子に本物を使うことで
上品で落ち着く雰囲気が漂う
ようになります。


ファッションでいえば、

全身上から下までハイブランドもので揃えたらお洒落かというとそうではないように、組み合わせの妙があります。

安いものも織り交ぜた中にワンポイントで高級な物を取り入れているとグッと締まるようなイメージです。

建築やインテリアのデザインでも同じことが言えて
ポイントに良いものを使って全体を引き締める。

この格子を檜材で高級に仕上げていると、
扉や施術室の机などの木材風の素材(メラミン材やプリント合板。つまり木材ではない)を使っている箇所も引きつられて本物のような雰囲気を醸し出し始めます。



本物件はこのように照明でのメリハリと、
見せるべきところに本物を使うことで予算を超えたデザインを実現しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?