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「悪い月が昇る」について

初めて​ noteを書きます。なので、まずは自己紹介から。
海藤文字という名前で、主にホラー小説を書いています。
第4回最恐小説大賞を受賞したホラー小説「悪い月が昇る」が、​竹書房より発売されています。
エブリスタで、いくつか作品を発表しています。
他には、ブログ「MOJIの映画レビュー」で映画の感想文を書いています。

子供の頃から現在に至るまで、一度も途切れず、ずーっと持ち続けた夢が、「本を出すこと」でした。
自分の書いた物語が、形ある書籍という形態になって、本屋さんに並ぶこと。
それがこの度、実現しました。正直言って、いまだに浮き足立っています。

「悪い月が昇る」はホラー小説です。夏の別荘地を舞台に、幽霊や妖怪が気配を漂わせるお話です。
なのだけど、ストレートな超常現象の話という訳でもないです。
物語は主人公の一人称で語られ、体験される出来事の真偽はあやふやです。
夏の熱気の中で現実は解体され、虚実はあいまいになっていきます。
超自然的な事象が実在するのか、あるいはそれは妄想で、語り手の内面が投影されたものなのか。物語はその両方を行き来しながら、徐々に加速していきます。

こういう物語になったのは、やはり自分がそういう話が好きだから……ですね。
白黒はっきり割り切れて、何もかもが論理的に解決するストーリーより、謎や疑問の余地を残した物語に惹かれます。
物語を通して、考えたい……というのがあるんですよね。想像力が刺激され、「ということは……こうなんじゃないか?」「こうとも考えられるんじゃないか?」というふうに、解釈や連想が広がっていく。
その広がりが大きく豊かなものであるほど、自分にとって物語の満足度は大きなものになっていきます。

「考える楽しさ」という点で今回特に追求したのは、「世界を認識するとはどういうことか」という素朴な疑問。
物語の中に、村に伝わる妖怪コトリの伝承が出てきます。

<ある山に鬼がいた。時折里に降りては子供を攫って食った。母親の嘆き悲しむのを見て己の所業を悔いた鬼は、食った子供に成り変わり、その後母親と共に暮らしたという……。>

コトリの伝承より

これは、母親にとってハッピーエンドか。
母親は子供を奪われ喰われ、騙されている。普通に考えれば、ハッピーであるはずがない。
でも、騙されていると知らない限り、子供は家に帰ってきて、変わらず幸せに暮らすことができている。
彼女にとって、真実を知ることは幸せなことだと言えるのか。
どんな世界か、それは認識によって変わる。
幸せとは何か。世界を認識するとは、どういうことなのか。

そんな思索も、随所に盛り込まれた物語になっています。
いかがでしょう。ホラーは苦手かな……と思っていた人も、少し興味を持って頂けるのではないでしょうか。
現時点での、作者の全力を込めた小説です。ぜひ、「悪い月が昇る」を手に取って頂ければと願います。


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