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【ショートショート】町内会クーデター
町内会費を払っているだけで、来るのは回覧板だけ。
サークル活動もあるようだが、高齢の方々が旅行に行ったりしているようだ。
旅行は自分の行きたいところに行きたい人と行くので全く関係がない。
そんな折、輪番制で仕方なく自分が町内会役員をやることになった。
引き継ぎの紙袋を受け取る。
規則類やら交通安全の何たらとか電話番号と住所の入った個人情報の固まりのような連絡先の表やら見る気がしない。
規則類とか一丁前に作りやがってみたいな悪意のある気持ちだけで目を通す。
やっぱり「ザル法」だ。
例の旅行も何の法的根拠もなく会費の補助を出してるじゃないか。
町内会会合の日、
高齢の方ばかり役員で、中年の自分でさえ最年少役員のようだ。
恐らく仕事がどうのこうの言って現役世代の人たちは断っていたようだ。
失敗した。
会合が進むにつれて少しずつイライラが募ってきた。そこにたまたま、旅行の話になってしまう。
つい、「この補助金は規則のどの条文に基づいて出しているのか」と言ってしまった。
町内会長が、
「第5項 その他、会員の親睦のため必要と認められたもの」
に基づいているとの回答
「必要性についていつ認められたのか、証拠はあるのか、ないのであれば、会員の過半数の賛成をその都度確認するしかないように読めるがどうなっているのか」
もう、やっていることは野党議員である。
でもここまできたらという気持ちと、変な正義感が発動してしまっているので止められない。
町内会長は「昔からやっているから」とか「毎年会報に写真を載せている」とか要領を得ない。
勘弁してくれよ、という空気が蔓延している。
「いずれにせよ、根拠がないという状況は良くないので、今年度は、旅行ができるように規則に明文化するか、旅行は親睦に必要であるという過半数以上の賛成を取りましょうよ」と提案した。
町内会長が「申し訳ないが、規則改正などの件について一任して良いか」と尋ねてきたので、もちろん良い旨回答し、議事録にも記載するように伝えた。
さて、どうする。
回覧板で
1 旅行の補助について規則に明記する
2 規則には明記しないが、旅行は親睦に必要なものである
3 旅行に補助金を出すのは反対
の3択にして回してみた。
何と、3の「反対」が過半数どころか80%を超えている。
こんなところにサイレントマジョリティである。
この結果を町内会の会合で報告した。
町内会長
「意識調査の結果は了解しました。ただ、一役員のあなたにその権限はないので、改めて、いずれまたこの結果を参考に議題に上げていく方向で進めたいと思います。」とのこと。
いやいや、「「一任する」って言ったでしょう!それで動いただけですから!議事録にもその旨記載があると思います。」といったところ、
「議事録には記載はないようです。」確かにどこを探しても一切そんなことは書かれていない。
書記もグルだったのだ。
確認を怠ったのだ。
革命は失敗に終わった。
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