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夢日記 さようなら、ぼくのヒーロー

この部屋に閉じ込められて数日。
喉が渇き、腹が減って、意識が朦朧としてきた。

そばには仲間が居た。
超能力を持った仲間だ。
能力は物体をコピーする能力を持ったオジサンと物体の時間を巻き戻す能力を持った少年だ。
ぼくの能力は。。。

ぼくらを追い詰めている敵は、超能力者を弾圧する人間たち。
普通の人たち。
超能力者の存在があきらかになっても、しばらくは大丈夫だった。
一部が犯した犯罪が引き金となって、普通の人たちの間に恐怖が蔓延し、魔女狩りが始まった。
役に立たない能力、犯罪をおかせないような小さな能力。狙った人にくしゃみをさせる能力などのささいな能力者も追い詰められ、収容所に運ばれ、自由を奪われ、消息は外には漏れてこない。
超能力者の間では、彼らはすでに処分されているという噂と恐怖が蔓延していた。

一部では、処分を免れるために、普通の人たちに協力している超能力者もいた。

今ぼくたちを取り囲んだ敵は、出口をなくす能力者だ。
ぼくらが囲まれているのは仕方のないことだった。
コピーを作るオジサンは、もともと普通のサラリーマンだったが、能力を使って高価な美術品のコピーを作って売りさばく贋作士だったし、少年は時間を巻き戻して様々な犯罪をしている。時間を巻き戻して少年の姿だが本当は70歳の老人らしい。
ぼくも同じく不可抗力ではあったが、犯罪をおかしていた。

70歳の少年がぼくらのリーダーだ。
時間を巻き戻せば、この場を切り抜けられそうだが、出口を塞ぐ能力者以外にも、その能力を妨害する能力者がいるのか、彼の能力は発動しない。
コピー能力で、水や食べ物を作り出せそうだが、オリジナルの水や食べ物に触れなければコピーは作れないらしく、周りに水や食べ物がない部屋に閉じ込められている。
彼は、部屋にあるものをコピーして分厚い壁を作っていて、それでかろうじて敵の侵入を防いでいる。分厚い壁のせいで、ぼくらは立ったまま生き埋めになっているような状態で数日が経っている。

分厚い壁が壊されるのも時間の問題だ。
拡声器で普通の人々が叫ぶのが聞こえる。
「君たちは完全に包囲されている。あきらめて投降しなさい」

「ふざけるな。殺されてたまるか」
70歳の少年が叫んだ。彼が巻き戻した時間を知るのは彼だけなので、彼がどんな恐ろしいことをしたのか、良いことをしたのかは、彼だけが知っている。彼は自分のことをヒーローだと思っている。それが正しいのかどうか分からないが、ぼくにとっては彼はヒーローだった。
ぼくは彼に助けられ、今、ここでも励ましをもらっている。

ただ、それでも、ぼくの能力を使うのにためらいがあった。
ぼくの能力は、どうしても人を不幸にする。
ぼくは強く思っている人と位置を入れ替わる能力。
ぼくの愛する人たち。大事な人たち。
その人たちと位置交換できる。
つまり、今、この瞬間、誰かと位置を交換できる。
ぼく一人なら、この場から脱出はできる。誰か1人を僕の代わりに閉じ込めて。他の2人の超能力者を見捨てて。
いや、全員脱出することも可能だ。ぼくが外の誰かと入れ替わった後に、外から超能力者二人と位置交換を繰り返せば、3人とも脱出できる。

「大丈夫だから、わたしに考えがある。成功するかどうかは分からないが、わたしが外に出られれば、超能力者にも普通の人にも犠牲は出ない。わたしを信じろ、わたしはヒーローだ」
70歳の少年は言った。

絶対絶命の状況で、ぼくは決断した。
ぼくは1人で外に出て、次にコピー能力を持つオジサンと入れ替わり、コピー能力を持ったオジサンがコピーした人と入れ替わり、次に70歳の少年と入れ替わり、オジサンがコピーした人と入れ替わり、最初に僕が入れ替わった人とオジサンがコピーした人と入れ替わった。
ぼくらは3人のコピー入れ替わった。
ぼくと70歳の少年と最初にぼくが入れ替わった人のコピー。
オジサンは、オジサン自身をコピーできなかったから、オジサンの分は、どうしても誰か必要だった。

僕が最初に入れ替わった人は、ぼくが愛した人だった。ごめんよ。。。でも、救出できた。一か八かだった。

ぼくらの代わりに捕まった3人のコピーされた人間はどうなるんだろう?
彼らがコピーとばれたら、オリジナルのぼくら、特に無関係のぼくの愛した人が捕まることになる。

「気にする必要はない。君は良くやった。あとは、わたしに任せなさい」
70歳の少年が言った。
そうして、少年は時を巻き戻し始めた。
より良い世界を作るため、彼は時間を巻き戻して、また、1人で戦うのだろう。巻き戻った世界で、ぼくは、また、彼と出会うのだろうか?生まれてくるのだろうか?

「さようなら、ぼくのヒーロー」

そう言って、ぼくは目覚めた。
この世界は、どの世界なんだろう。。。彼は、この世界にもいて時間を巻き戻して戦っているのだろうか?何と?何と戦うのか?

「おはようございます」
おはようございます。この世界のぼくには、残念ながら、愛する人と位置交換する能力はないみたい。
夢を見る能力はあるが、みんな持っているよねー。ヘンテコな夢だなー。

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