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文学フリマ 福色物語の抜粋

 鮎沢はディフェンスとキーパーの狭い隙間にシュートを放つも、ディフェンダーが足を伸ばしてボールを止めた。俺は転がったボールに駆け寄り、短いドリブルでキーパーの手前に持ち込む。キーパーが取ろうとして前に出てくる。シュートを打つと見せかけてキーパーの横に回り込み、スペースができた。俺は冷静だった。つま先でチョンとボールを突いた。無人のゴールにボールは転がった。 ピ、ピ、ピー。「やった。やったぞ。決まったー!」

『福色物語』

「ねえ、教えてくれよ。どこへ行くの?」
 雪乃がじれたように訊ねてくる。
「行けばわかるさ」
 俺は雪乃の頬を指で押した。白い頬はぷにゅりと柔らかくめり込んだ。
「こら。僕の体で遊ぶなって」
 雪乃がうるさいので、体のあちこちを指で押したり、触れたり、腰を揉んだりした。
「小学生かよ。ブンタは」
「それに近いな。これでも食らえ」
 俺は、雪乃の脇腹を容赦なくくすぐった。
「あっ。ダメ、ダメ。くすぐったい」
 雪乃は身をよじり、悶えた。本当に小学生レベルの悪ふざけだ。
「何か、二人ともやらしいよ。触って、触られてさ。ダメ、ダメって。大人の関係?」
「知らないよ。ブンタが勝手に僕の体に触れてくるんだ」
「私のお姉ちゃんをいじめないでよ。ホシノも触ってよ」
「こら。電車の中でそんなに騒ぐな。よその客に見られてるぞ」
 鮎沢は三人に注意する。

『福色物語』

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