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藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない

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ミステリー風味のオリジナル小説です/ 謎を解くのは、藤壺の宮!? 平安時代に転生したと思ったら、そこははなんと『源氏物語』の世界。 奇妙な殺人事件の数々に、令和の大学院生と光源…
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#平安時代

藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第1話】

    序  ──死んだと思ったら、産まれていた。  ちょっと何を言っているのか分からない…

伊井野いと
3か月前
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藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第2話】

第一章 狐狸の、人に化けて池に落つること       1  御簾の隙間から入る、春の陽光…

伊井野いと
3か月前
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藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第3話】

第一章 狐狸の、人に化けて池に落つること             2 「お二方とも、八つ…

伊井野いと
3か月前
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藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第4話】

第一章 狐狸の、人に化けて池に落つること 「そこからまた、どうして『狐狸が人に化けて殺し…

伊井野いと
3か月前
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藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第5話】

第一章 狐狸の、人に化けて池に落つること 「それじゃあ、大の男でも飛び石から落ちてしまう…

伊井野いと
3か月前
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藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第6話】

第二章 空蝉の身をかへてける木のもとに なほ人がらのなつかしきかな        1  …

伊井野いと
3か月前
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藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第7話】

第二章 空蝉の身をかへてける木のもとに なほ人がらのなつかしきかな 「それで? 今日はどんな事件の話を持ってきたのかしらね、左衛門督どのは」       2  従四位外、左衛門督──それが眼前の青年の、現在の位階と官職だった。  『源氏物語』の通りであれば、本来は近衛中将であるはずの時期なのだが、彼は敢えてその道を選ばなかったという。  父親である桐壺帝には、やはり近衛(内裏内郭の警固)の職を薦められたようだが、彼はそれを断り、わざわざ左衛門府の官職を希望したらしい。

藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第8話】

第二章 空蝉の身をかへてける木のもとに 「権少将が犯人だと仮定するならば、凶器はどこに消…

伊井野いと
2か月前
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藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第9話】

第二章 空蝉の身をかへてける木のもとに       4 「単純な構図、でございますか………

伊井野いと
2か月前
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藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第10話】

第三章 花の夕顔、鬼はや一口に喰ひてけり        1 「……いよいよ降り出しそうで…

伊井野いと
1か月前
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藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第11話】

第三章 花の夕顔、鬼はや一口に喰ひてけり           2  飼っていた雀の子が、…

伊井野いと
1か月前
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藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第12話】

第三章 花の夕顔、鬼はや一口に喰ひてけり           3  着丈の長い単や袿を、…

伊井野いと
1か月前
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藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第13話】

第三章 花の夕顔、鬼はや一口に喰ひてけり   「何でも彼女は、まるで鬼に一口で喰らわれて…

伊井野いと
4週間前
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藤壺の宮は〝物の怪のせい〟にしたくない 【第14話】

第三章 花の夕顔、鬼はや一口に喰ひてけり  「足跡の主は、一体どうやって……誰の目にも留まることなく、廃院を出入りしたっていうのかしらね」       5 「いっそ、廃院に棲みついた鬼が、肘から上をぱくりと喰らっちまった──そう考えた方が、納得がいくというものですよ。そうは思いませんか? え?」  そう締めくくった橘の少尉は、どこか投げやりな仕草で肩を竦める。  だが、脩子としては、どうしてもそれを首肯する気にはなれなかった。 「だからって、鬼、ねぇ……」 「でも、姿