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くるくる電車旅<柳に蛙>

小春日和に誘われて、春日井市の小野道風記念館を訪ねました。電車旅とはタイトル倒れで、利用したのは、ゆとりーとライン。高架の専用道路を市バスが走ります。乗り降りするところを、バス停ではなく駅と呼ぶのだから、電車みたいでしょ。

大曽根駅から川村駅まで。
バスは、東区から守山区へ、高架の専用レーンをひた走ります。信号はなく、見晴らしがよく、まるで王様の道みたい。便利で快適なので、利用客多し。遠くには、雪化粧した山まで見えました。

車窓の景色を楽しんでいると、ほどなく川村駅に到着。駅を出て北へ。庄内川にかかる松川橋を渡ります。
橋から見下ろす川の水は透明で、川底の小石まであざやかに見えました。
河原には、たくさんのカラス。かわるがわるに、浅瀬で水浴びしています。カラスたちの羽が、しっとり黒々としているのは、洗いたてだからでしょうか。

橋を渡ると春日井市。
土手を下りると、道風公園があります。大きな柳の木があるので、すぐにわかりました。
小野道風といえば、柳に跳びつくカエルの逸話が有名です。

何度も何度も失敗して、ついに垂れ下がる柳の枝にぶら下がったカエルを見て、発奮したという話。あきらめなければ夢はかなう、努力は裏切らないという教訓話。ありそうな話ですが、なぜ道風さんなんでしょうね。日記にでも書いていたのかしら?

道風公園の柳の木の下には、大きなカエルの石像。小野道風の銅像の足下には、小さなカエルがうずくまっています。
カエルは、ここでは大スター。

公園のかたすみに小野社と書かれた社があり、「小野道風生誕地」の立て札が。内容を読むと、[証拠はなく伝説]と書いてありました。

小野道風さんは、平安時代の人です。
立て札によると、平安貴族のお父さんがこの地に滞在しているとき、里の娘に産ませのが道風さん。現地妻の子。源氏物語の明石を思い出します。
尾張で育った道風さんは、出世を求めて、みやこの父を訪ねて行ったのでしょうか。それとも、みやこの父から迎えが来て、お母さんと涙の別れをしたのでしょうか。

小野道風記念館の入館料は百円。
「春日井市外の方ですか」
「はい、橋を渡ってきました」
受付で、こんなやりとりをしました。
記念館には、小野道風ゆかりの書が展示されています。二階は、全国コンクールで入選した書の展覧会でした。

生誕地といっても伝説にすぎないのに、春日井市にこんなに大切にされて、市民に愛されて、おしあわせですね、道風さん。

帰り道、橋を渡っていると、欄干にずらっと並んでカラスが止まっていました。水浴びで濡れた羽を、日に干していたのかもしれません。


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