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パリでユジャ・ワンを聴く

最初にユジャ・ワンのピアノ演奏に出会ったのは、Instagramのリールだったかな。ピアノを始めたばかりだった私のおすすめ欄にはピアノ演奏動画が溢れており、ある日目を引くリールが表示された。

超ミニスカートのど派手ドレスにハイヒール、鋭い角度のボブヘアーが激しく揺れ、目が追いつかないような超絶技巧の演奏。息を呑む観客の視線に、演奏後の拍手喝采。

それがユジャ・ワンだった。

ショパンコンクールに出場するピアニストの名前を知るか知らないかくらいだった私は、表現力や技術力の高さを感じ取るほど耳が肥えていなかったが、とにかく心に刺さって、ひたすら彼女の動画を見漁った。
(さまざまな批評を見聞きして、ビジュアルのインパクトとは裏腹に、繊細な表現力が評価されていることを後に知った。)

精力的に世界中でコンサートを行っているユジャ・ワン。今冬もヨーロッパツアーを予定していると知り、一生に一度は生で演奏を聴きたい!と思い立ちチケットを押さえ、パリへと赴いた。

ユーロスターの車窓から。

独特な内装のPhilharmonie de Paris(フィラルモニ・ド・パリ)、ほぼ満席の状態で固唾をのんで待ち望む人々。もちろん私も。
Mahler Chamber Orchestraとタッグを組んでのツアーのため、ユジャ・ワン本人は2曲目からの登場。シルバーのキラッキラのミニドレスに、ルブタンの超絶ハイヒールで舞台袖から姿を現した瞬間、観客の興奮が凄まじかった。

緊張の一音目、「あ!やさしい!」と思った。
コンチェルトなので全体のバランスに溶け込みながら、ピアノが際立つ部分は期待通りの存在感で、なるほど〜と彼女のピアノの音とオーケストラ全体のストーリーを楽しんだ。
初めて聴く曲だったが、繰り返すフレーズの演奏の違いを感じてみたり、転調による物語の展開を想像してみたりするのはワクワクした。

左手演奏で指揮振りをした際の配置。手元が見えて嬉しい!iPadに楽譜を表示していたようだ。

そして最後はお待ちかねの、ガーシュウィンのラプソディ・イン・ブルー!ピアノだけではなくてあちこちに聴きどころがある上に、誰しも聴いたことがある抜群に楽しい曲調で、会場全体の興奮が最高潮に。極めつけは最後に打ち鳴らされる銅鑼。一気にオリエンタルなムードになって、ユジャ・ワンもオーケストラの演者も観客も最高の盛り上がりで演奏が締めくくられた。

とても良かった!スタンディングオベーションの拍手と歓声に応じるようにカーテンコールが4度ほど繰り返され、お決まりの超高速お辞儀を何度も見ることができた。

思い切ってチケットを取って弾丸で来て良かった。初めてのユジャ・ワン体験にしびれ、演奏を思い返しながら、ユーロスターに乗って帰英した。


演目
Mahler Chamber Orchestra
Yuja Wang, piano and conductor

  • DVOŘÁK: Serenade for winds, violoncello and double bass in D minor, op. 44

  • STRAVINSKY: Concerto for piano and wind orchestra

  • JANÁČEK: Capriccio for Piano Left Hand & Chamber Ensemble

  • GERSHWIN: Rhapsody in Blue; orchestrated by Ferde Grofé

動画は2019年にウィーンで開催されたコンサートより、Rhapsody in Blue by George Gershwin

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