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Iくんとの忘れられない4年間④

 サークルの同期は女子が多くて、唯一の男子だった彼は、次期代表を見据えて、サークル運営のほうにも携わっていた。サークル内で、私たちが付き合っていることはみんなが知っていたけれど、サークル内でカップルっぽさを出すことはしなかった。あくまでサークルはサークル。

 私が大学3年、彼が2年に進級すると、サークルにはたくさんの後輩たちが入ってきた。同時に彼はサークルの代表となって、後輩に慕われる存在となった。

 一方私はというと、ゼミに就職活動に…と忙しく、なかなかサークルに参加することもできなくなった。それに、なんとなくサークルに顔を出すのも面倒に感じていた。当時の私は20才で、社会人一歩手前。サークルの新人ちゃんたちは18才で、高校を卒業したばかりのまだまだ子ども。なんとなく話も合わないのだ。面倒見もあまりよくない私にとって、年下の子との付き合い方がよくわからなかった。

「Lunaはなんでサークルに来ないの?」

「私は忙しいの。就活もあるしゼミもあるの」

 そんな喧嘩をよくしていたように思う。別にお互いがお互いを嫌いになったわけでは無いが、付き合い始めてから丸3年以上経ち、昔のドキドキも消え去ってしまった。なんとなく、昔とは違うことを、お互い感じていた。

 最初に別れを切り出したのは私だった。大学3年の夏のことだった。

「なんか昔と違ってきちゃったよね。あなたのこと嫌いになってはいないけど、別れた方がいいと思う」

 彼は一旦引き止めたが、しぶしぶそれを受け入れた。

 別れた後で、私は気づいた。彼の存在が私の中でいかに大きなものだったか。17才からずっといっしょにいて、毎日メールや電話もして、お互いがお互いのことを誰よりも理解していた。それがぱったりなくなったのだ。そして、それは彼も同じだったようで。

 秋に、あっさり、復縁した。笑

 秋から冬に変わる頃に私の誕生日がある。21才の誕生日、彼に事前に伝えた。「今年の誕生日、プレゼントはいらない。その代わり、日付が変わる瞬間、いっしょにいてくれる?」ーー彼はその願いをとってもロマンチックに叶えてくれた。

 20才最後の日、私がバイトを終えると、彼はバイト先の最寄駅のロータリーに車をつけて待ってくれていた。その車に乗り込むと彼は言った。

「なるべく、窓の外は見ないで。どこに行くか楽しみにしてて」

 まずはバイト先の駅からほど近いカジュアルフレンチのレストランへ。予約してくれていたようだった。とっても美味しいフレンチを食べた後は、さらに長い長いドライブへ。田舎道をどんどん進んでいく。

 何時間経っただろうか。そろそろ日付が変わる頃だ。そんなとき、彼がおもむろに言った。着いたよ、と。

 着いた先は、夜の原っぱだった。誰もいない、田舎の町の原っぱ。空を見上げると、星がたくさん輝いていた。都会じゃ見られない夜空だ。

「この星空を、見せたかったんだ。誕生日おめでとう」

 これ以上ロマンチックな誕生日を、それまでも、それからも、私は迎えたことがない。笑 彼はそのまま車中泊を予定していたようだが、私はどうしてもシャワーを浴びたくて、結局ビジネスホテルに宿泊した。そしてチェックアウトした後は、家から何百キロも離れたその街を観光し、そのあと帰ってきた。私は思った、やはり私には彼しかいないと。

 でも、そう思ったのは私だけだったようだ。21才の冬、今度は彼から告げられた。

「やっぱり前とは違う。もうLunaのことは『好き』じゃないかもしれない。とても大切だけど…『好き』という感情じゃなくなってしまった」

 まさかあの誕生日から2ヶ月とも経たないのにそんなことを言われるとは思わなかった。でも、受け入れるしかなかった。彼はもう私を好きではないのだ。自分のことを好きではない人に無理やりつきあってもらうのも自分のプライドが許さない。私たちに2度目の別れが訪れた。泣いて泣いて泣いて、1週間以上ほとんど食べれなくて、気づいたら、どんなにダイエットしても辿り着かなかった目標体重になってしまっていた。

 でもそれから、就職活動中だった私は、ちゃんと自分自身を見つめることにした。今までは彼と結婚する前提で、地元に残れる仕事にしようとか、考えていたけど。本当にやりたいことは?そう思ったとき、私が出した答えは「上京したい!もっと広い世界を見てみたい」だった。

 そして、第一志望の会社から内定をもらい、私はその夢を叶えることとなったのだ。

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