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『社会・からだ・私についてフェミニズムと考える本』

今年に入って読み始めた本の中で、井上彼方編著『月歩双書02 私・からだ・社会についてフェミニズムと考える本』(社会評論社)は、わたしにとって久しぶりに新鮮な驚きのある、「読んでよかった!」と嬉しく思った本でした(去年のベスト10はこちら)。

しばらく、じわじわと高揚感を味わっていたのですが、今回は、この「よかった!」の部分を、もうちょっと言語化したくて書いてみます。できるだけたくさんの人が、本書を手に取ってもらえたらいいなと思って。

本の概要は、編著者である井上彼方さんのこのツイートにつながるスレッドを読んでみてください。出版社のURLも貼っておきます。

もともとは、要友紀子さんと鈴木みのりさんの文章目当てで購入したものです。そのほかの方たちについて、わたしは、読む前に知ろうと思いませんでした(すごく失礼ですが)。たしか下山田志帆さんはサッカー選手だったよね?とか、インベカヲリ★さんはあの本の表紙を飾ってからすごく距離を感じていた人だな(今は、そのイメージが一面的な決めつけだったなと思うので改めたいです)とか、そんな程度です。でも、だからこそ余計に、それぞれの語りから感じられる、一人ひとりのフェミニズムに興味を持ちました。フェミニズムは、自らのフィールドでの実践と言語化(発信)の両輪が欠かせないということも強く感じられて、久しぶりにワクワクする気持ちをもらいました(私の高揚感はココ)。

ちょうど、少し前に話題になった、SisterleeとNOISIE共同で企画した飯野由里子さんへのインタビュー記事(前後編、下記リンク)の中に、「フェミニズムに「アイドル」や「スター」はいらない」と書かれた文章がありました。その言葉を借りると、本書も、まさにフェミニズムのアイドルやスターではない人たちが、自分事として率直に語るフェミニズムの本、という印象です。一人ひとり、自分が立っている世界への深い考察があって言葉になったものなんだろうなと感じるのは、もちろん話者の実践や学びがあるからこそですが、インタビューでの聞き手と編集を担った井上さんの力(センス)も、多分に発揮されているからではないかと思いました。

タイトルの「私・からだ・社会」のとおり、「からだ」を中心に「私」や「社会」との接続が試みられている点も、すごくバランスがいいな!と思います。それらのベクトルが、さまざまに交差してるところも面白い。例えば、社会のことを中心にまとめられた1章(タイトルは「どのような姿勢で社会問題について考えるべきか」)の、要さんの文章には「私」がほとんどない。一方の鈴木さんは「私」からはじまってる。私を中心にした2章(同じくタイトルは「自分自身を振り返りながら、人との関係性を考える」)では、インベカヲリ★さんは他者と向かい合うときの自分について話していて、往復書簡では互いに向き合いながら内省しあってる、といった具合に。

あとは、この本の中でわたしは、自分よりずっと若い世代の方たちに、自分の世界の見え方を広げてもらった気がしました。井上彼方さんと依田那美紀さんの「「ルッキズム」とどうやって生きてきたか」という往復書簡もそうだし、オーガニックゆうきさんのSF小説なども、差し出されるテーマがわたしには新鮮でした。「そう反応するんだ!」とか「こう展開するのかー」と唸る箇所があって、楽しかった。

この本を読んだ人たちが、それぞれの「社会・からだ・私」について語りはじめたらいいな。その声を聞いてみたいし、わたしも話したい。タンポポの綿毛のように広がってほしい一冊です。ぜひ、読んでみてください。

最後に、井上さんに聞いてみたいことがありました。第1章のタイトルは「どのような姿勢で社会問題について考えるべきか」とあります。「べき」と強く言い切ることには、ためらいはなかったのかな。なんで、そこに力が入っているのか、機会があればお聞きしてみたい気がします。






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