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無伴奏ソナタ

引越しの際に、学生時代に読んだ本が出てきた。

『無伴奏ソナタ』

SFはあまり読まない私が、珍しく読んだオースン・スコット・カードが書いた
未来の管理社会の話。

「他者の影響を一切受けない、完全にオリジナルで斬新な才能」

って・・・・・・。
考えさせられた当時を、思い出した。
何度も本を処分しているのに、残った中にあるということは、印象が深かった作品なのだけれど、また読んでみようと思うと重い感じがして、その度に放置していたのだった。

未来の管理社会で、人々は生まれた時から素質に見合った職業を割り当てられ、分不相応は重大な犯罪とされているという設定のこの作品は、
生まれながらに音楽家の天分を見出された主人公が、幼いうちに社会から完全に隔離され、他人が作った音楽を一切聴くことを禁じられる話だ。
完全にオリジナルな音楽だけを作って演奏し続ける。彼の音楽を聴けるのもまた、選ばれた聴衆のみ。

森の中で暮らしながら、周りの自然から、つぎつぎと曲を生み出していくクリスチャン。
ある日彼は聴衆の一人に、バッハのテープを渡され、興味を惹かれた彼はテープを聴いてしまい、結果、音楽にバッハの影響が現れ、音楽を奪われる。

「創る人」は、外部からの影響を受けずに、完全にオリジナルなものを生み出さなくてはならないという内容に、恐怖を感じた覚えがある。

完全にオリジナルなものを強要する世界で生き、「純粋」な物だけを作るとは?
突き詰めるとこんなことになるのか。
軽く楽しめないのに持ち続けている本なのだ。

 



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